03

 イートインコーナーで、ひとり、椅子から倒れた。制服。たぶん、同世代の女。チョコを買いまくっていたので、それのせいだろうか。


「大丈夫ですか?」


 まずは身体にふれず、声がけ。応答なし。

 いったん戻って、監視カメラがちゃんとついているのを確認する。監視カメラがあれば、何かのときに証拠として提出できるから。


「よいしょ」


 まず仰向けにする。

 顔が紅い。それだけで、もう何の処置も必要ないことがわかった。


「酔ったのか」


 さっき買ったチョコ。たしかに、少しだけアルコールが入ってある。それでも、別にそこまでの量ではないはずだった。疲れて倒れたってところか。

 救急車。呼べば大事おおごとになるし、後処理も面倒だった。


「そのまま寝てると、救急車呼びますよ?」


 なかば脅し。

 目が開く。こちらを見る。切ないほどに、澄んだ瞳。


「おじさん」


 おじさんか。まあ、べつにかまわないけど。


「なんですか?」


「おじさん。生きててたのしい?」


「関係を求めようとしたら救急車から警察にグレードアップしますけど」


「生きててたのしい?」


 いたく哀しみを帯びた目つき。その年で。いや自分も似たような年齢だけども。


「あなたは楽しくなさそうですね」


「たのしくないよ。イートインコーナーでぶっ倒れてさ。起き上がれない」


 さっきから、ぷるぷる震えているのは、起き上がろうとしているからか。

 手を貸してあげた。

 勢いで抱きついてくる。

 泣きはじめた。最初は、静かに。だんだん、震える声で。よほどしんどかったのだろう。か細く、それでいて、心を打つような泣きかただった。

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