第9話 犬と剣と拳と
名前は大事だ。それがなければその存在を伝える事も大変だし、存在している事を理解すらできないかもしれない。名前とは存在の立証、他者とのつながりの為に不可欠な存在だ。今鍛えている流派も技名もしかり。そんな説明を受け、私達は自分の使う流派や技に名前を付けている。
私は気合い入れる為に技名叫んでいたけど、自他に存在を認識させる行為は言霊の力が加わり強くなるからコソコソ隠れたりしない限り普段から叫んだ方がいいと教わった。威力が105%ぐらいにはなるらしい。奇襲や不意打ち捨てて5%しか増えないって割と微妙じゃ……。だがしかし戦うべきマルスは未来視持ちで奇襲効かないしこれでいいのか。それに急造チームの連携には大きく役立ちそうだし。
「
Hは我流精霊術で使う精霊を犬に特化させることにし、名を『精霊犬術』と改めた。犬は主従関係を維持しやすく、複数いても統率が乱れないのがいいらしい。彼の基礎である五行思想の精霊犬の確保は多少難儀したが、火行1匹 水行2匹 土行3匹 木行3匹 金行1匹の計10匹集まった。Hの吹く犬笛に合わせ、彼の手足のごとく駆ける様は見ていて壮観である。
「
Kは強大な力を持つ深淵魔術を魔剣生成に以外に使用しない事で暴走を間接的に抑える方針に決めた。魔剣も時間経過で消滅する仕組みになっており、戦闘訓練の度に砕けた剣の破片掃除に明け暮れる時間は消えた。
魔剣以外一切使わないという事は生身で戦って行くことになるが、そこを心配するのは不可能なほどKの剣技は極みの領域にあった。余程の広範囲攻撃でなければKは無傷だったし、避けられない時も地面から大剣生成し盾の代わりに受け止める。なにより達人が自分専用の魔剣を作れるという脅威。30立方センチメートルの鉄塊を3秒で千切りにされた時は開いた口が塞がらなかった。本当に何者なんだろう。
「
私は課題点である初動を道具に頼ることにした。ろ過しエネルギー純度を高めたサラマンドラの血液をオイルライターに注ぎ込み、着火と同時に炎を重ねられる。後は炎から上昇気流が生まれ風を重ねる。後は戦っている内にできてくるその辺のモノを適当に重ねればいい。
サラマンドラが怪獣っぽいので理ノ重と合わせ名前は怪重拳術とした。ネーミングセンスないかもしれないがいくつか候補を選んでいた時にシロさんが「そんな真面目な顔でかいじゅうけんじゅつとか」と腹かかえて笑い出したのでそれに決めた。笑える方がいい。子供の未来を楽しくしたいから私は戦うのだから。
「はーい、注目!」
「現状の犬と剣と拳の強さを攻撃、守り、速度、持久力、特殊性それぞれ10段階評価します。10点満点でマルスとの実戦級と判断してください」
常盤姉妹が白衣に伊達メガネという姿で現れた。研究員とか博士的な雰囲気出したかったのだろう。……可愛いな。
精霊犬術
攻撃 6点 今一歩
守り 7点 属性対応できるのが強み
速度 10点 流石は犬。文句なし
持久力 5点 精霊犬10匹同時使用の負担をどうにかしましょう
特殊性 7点 五行全て扱えるのは良いけど普通
総評 自分自身も強くありましょう
深淵剣術
攻撃 10点 魔剣だけなら5点のはずなのに技量が凄い
守り 4点 剣を守りに使えても流石に生身じゃあね
速度 3点 人の走る速度ではね
持久力 4点 人のスタミナではね
特殊性 8点 剣の精製だけでも深淵魔法自体が底知れない
総評 深淵魔法を扱える強靭な精神を持って暴走しないようになればOK
怪重拳術
攻撃 8点 本当に強い一撃が出せるまでが遅いけど条件次第で強い
守り 6点 微妙
速度 10点 点火から風を重ねるまでが微妙だけどそこからは一級
持久力 10点 拳術の特性から言って理論上は永遠に戦える
特殊性 8点 洗練されていないがその辺のエネルギーを利用できるのは強い
総評 初動の遅さと初動が道具だよりなのはよくない。
「自分自身もってKとNの方が人として身体能力おかしいんだって」
「深淵魔法扱えるようになれとか無茶苦茶な総評言われた」
「点数で言えば私が一番強いのは予想外」
それぞれの反応していると
「まあ、この1か月でここまで強くなれたのは本当にすごいよ」
「うちらが鍛えた甲斐があるってものだね」
常盤姉妹がしみじみと語っていた。……この1か月で?
「1か月!? 私大学……え? もうそんなに経ったの!」
「いやいや、15日ぐらいだろ? 夜寝たの記憶になる限りそのぐらいの回数」
「最初のころは数日寝込むとかあったから気づいていなかったのか」
そんな、そうしたらもしや
「なあ、K。火事騒ぎから1か月家に戻っていないって行方不明とか世間でヤバい扱いになっていないか? 私達」
凍り付いた空気に全員がオロオロしていた
――神託の日まであと75日 所持遺体 両腕部
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