第5話 ネタバレのため本文末尾に記載
私は目を閉じた。
(豊穣の女神ありがとう)
偉大なる女神がくれたであろう「豊穣」の魔法に感謝しながら、私は澄んだ気持ちで死を受け入れた
・・・つもりだった。
ばさっ
固い地面にたたきつけられると思った。
(でも、人間死ぬときは一切の痛みは現世に置いてくるのかしら?ちっとも痛くないわ。むしろ・・・)
温かく、優しく、心地よい。
まるで豊穣の女神に抱きしめられる赤ん坊のような感覚。
(輪廻転生して赤ちゃんになったのかしら?)
私は誰かに抱っこされている気分になっていた。
(でも、これって・・・女神と言うより?男神?)
私は目を開ける。
「お目覚めですか?メーテル姫?」
さらさらした金髪に、青い瞳。理知的な顔が優しく語り掛けてくる。
「ユリウス大臣?」
「えぇ、びっくりしましたよ。天使が落ちてきたかと思って」
余裕な表情と声とは裏腹に珍しくこめかみのあたりに汗を掻いているユリウス大臣。この国の資源の管理を中心に若くして現国王の右腕とも名高い大臣で、私の能力が作物と関係していたのもあり、よく顔を合わせていた大臣だ。
気づいてみると、私はユリウス大臣にお姫様抱っこされていた。
「きゃっ」
私が慌てると、
「慌てないでください、今降ろしますよ」
とユリウス大臣がゆっくりと足の方の手を下げてくれるので、私は足を地面につける。私が下りたところは門から王宮の玄関をつなぐ石畳でできてた部分であり、その硬さを再認識して、私はぞっとした。
私が上を見上げると、アテネシア王女はただただ見下ろしていたけれど、露骨にアドルド王子が悔しがっていた。
「何をしている、ユリウス大臣!!」
「人助け・・・いや、姫助けです!!」
「ちっ」
アドルド王子とユリウス大臣は歳が一緒だ。そして、アドルド王子のお母様は始め授乳ができず、ユリウス大臣のお母様が代わりにアドルド王子にも授乳させたと言う。つまりは、二人は乳兄弟にあたる。しかし、年齢が一緒で、環境もアドルド王子の方が恵まれていたはずなのに、ユリウス大臣の方がよほど大人っぽかった。
5「捨てる王子あれば、拾う大臣あり」 完
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