第5話 女神の微笑み
祭壇の下にたどり着いた彼に向かって、奥の壁面に設置されたステンドグラスから白い光が差し込んできた。
そのあまりにも神秘的な光景に誰しもが目を奪われる。
「こ、これは……
「すげえ……確率20%のR以上確定……」
「一体、どうなるんだってばよ!」
観衆のざわめきが嫌でも耳に聞こえてくる。
だが、ムーラチッハにとっては全く気にならない。
(当然だな。なぜなら俺は"武侠"になるのだから)
彼にとっては、R以上は当たり前のことなのだ。
(
そのとき、内心で息まく彼を更なる異変が襲った。
スポットライトのような白い光が、彼が登壇した瞬間に突如として黄金色へと変化したのであった。
「こ、これは……
「すげえ……確率5%のSR確定……」
「一体、どうなるんだってばよ!」
(やはり……! SR以上ともなれば、いよいよ"武侠"か……!)
これまでの修業の日々が報われたような、実に晴れやかな気分であった。
そんな彼に対して、壇上に立っていた司祭は声をかけた。
「神託の儀では授かる天職は、"神託の儀"に至るまでの十五年の生を鑑みて、女神様が選んでくれたものです。どうか、心おだやかに祈りを捧げてください」
ムーラチッハは、祭壇上で片膝をついて一心不乱に祈りを捧げた。
そんな彼に、司祭もまた熱心に聖句を唱えだした。
「エーリークジェルーントト、デダュー、パジャエンン、チリービズ……」
静まり返った礼拝堂に、聖句が響き渡った。
(なんてすばらしい聖句なんだ……。とても素晴らしい転……じゃなかった天職を授かることができそうだ)
そんなことを思っていると、ムーラチッハの眼前が眩い虹色の光に包まれた。
「こ、これは……
「すげえ……確率1%のSSR確定……」
「一体、どうなるんだってばよ!」
しばし、虹色の光が祭壇上を包んだ。
神話の一ページに刻まれるような神秘の顕現であった。
眼前で繰り広げられる秘蹟に、もはや観衆は息を飲むことすら忘れてしまっていた。
ムーラチッハは、それらの神秘を一身に受けながら、司祭の唱える聖句を心に刻むのであった。
彼にとっては、その一節一節が天職を授かることの重みのように感じた。
無学の身には意味が分からないものであった。
だが、心を震わせることはできる。
(心だ! 心で受け止めるんだ!)
ムーラチッハは、ただひたすらに祈りを捧げた。
心が奇跡で浸されていくように思われた……。
しばらくすると、虹色の光は弱まり、礼拝堂内の景色は元通りになった。
静まり返る周囲をよそに、ゆっくりと司祭が近づいてきた。
「失礼します」
そう声をかけて、彼の天職を探る。
「な、なんと……いや、なんてことだ……まさか……」
「どうしました?」
「いえ、いま公表します」
司祭は顔面から滝のように汗を流しながら叫んだ。
「"聖女"! この者が授かった天職は"聖女"!」
静寂が礼拝堂を支配した。
("聖女"?
"聖女"だと?!)
"武侠"を授かると思っていた俺は理解が及ばない。
何が我が身に起こったのか、俺には理解できない。
理解ができない……。
観衆が起こす喧噪をよそに、司祭が声をかけてきた。
「この結果もまた、女神様の思し召しです。明日正午に聖堂前にお越しください」
だが、司祭の言葉など無視して、俺は慟哭せざるをえなかった。
「なぜだ……なぜなんだ!
女神……
女神プギャープゲラゲラよ!!」
静まりかえっている教会のなかに、俺の慟哭だけが響いた。
聖堂でうずくまる俺を、女神像が微笑みを浮かべながら見下ろしていたのだった。
■■あとがき■■
2021.12.10
女神像の笑い方は、m9(^Д^)プギャーwwwwwwみたいな感じですかね……。
いや、それ微笑みじゃないやんってwwwwww
今回寝落ちを3回ぐらいしてしまったので、更新まで間があいてしまってすみません!
今後も寝落ちはすると思うので、許してください!
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