我慢してるのは
…ガチャ
そーっと玄関のドアを開ける。
静まり返った廊下を進むと真っ暗なリビング。
パチッと電気をつけて
「ただいま」
明るくなった部屋で一応帰宅の挨拶。
今日も終電ギリギリ、さすがに疲れた。
寝室に忍び入ると
ドアの隙間から漏れた光でわずかに動く影。
「……おかえりぃ」
「ごめん、起こしちゃった?」
慌ててドアを閉めるけど
愛しい彼女の顔が見えないので間接照明をつける。
「…ううん、久々に顔見れてよかった」
とろんとした目でそんなこと言われると
疲れなんて吹っ飛ぶ。
たしかにもう2日は話してなかったか。
「明日も朝早いんだよね、寝ていいよ」
「でも……もうちょっと話したい」
それはこっちのセリフだけど。
朝が弱い彼女が辛い思いをするのは嫌だから。
「…話したら目覚めちゃうよ」
「……だって」
「…じゃ、これで我慢ね」
重そうなまぶたに軽く口づける。
離れようとすると弱々しく腕を掴まれる。
「……口にして」
それは敢えてやめたのに。
でも不満そうに口を膨らます彼女には逆らえない。
…チュ
「…んふふ」
満足してくれたようで彼女はすぐに目を閉じた。
しばらくして聞こえてくる規則的な寝息。
「おやすみ」
静かに寝室を出て思わずドア前に座り込む。
ちゃんと余裕そうに見えてたかな。
「……我慢してるのはこっちだっての」
唇に手をやるとまだ温もりが残っていた。
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