第7話

「違うの。違うのよ……。」

「姉ちゃんしっかりしろよお……」弟はついに泣き出してしまった。ぐすっぐすっと鼻をすする音が私の耳に届く。

「お姉ちゃん、中学校で何かあったの。お母さんに話すのが嫌じゃなかったら、教えてちょうだい。お母さん、お姉ちゃんが何に苦しんでいるのか知りたいのよ。」

「お姉ちゃんじゃない。」

「なに?」

「私はお姉ちゃんなんかじゃない!」

 違う。私をお姉ちゃんと呼ぶ人にわかるわけない。私はお姉ちゃんじゃない。ちゃんと瑞希っていう名前があるんだ。私は瑞希だ。

「幼稚園のころ仲良かった美羽ちゃん、覚えてる?あの子にも弟がいてね、言ってた。弟なんていらないって。」

「姉ちゃん!」

「弟がいると自分が除け者にされるから。頭では理解できててもね、心からわかることはできないの。姉になると、下の子が優先になって、自分は親の目に見えなくなる。誰も私を最優先にしてくれない。」

「学校の友達にも、言えないのね。」

「言えるわけないじゃない。唇と目が汚くなった原因は自分で自分を傷つけてるからだななんて。」

 あの日、Twitterで「皮膚むしり症」を見つけた時。私の周りは時間が止まった。私は病気だったんだ。私は正常じゃないんだ。そう思うと、うれしくもあり、悲しかった。私は家族のせいで異常になったんだ。私はつらいんだって、認められたんだ。


 結局、私は何がしたいの?自分でも自分がわからない。

 突然わけのわからないことをいいだして、母も弟も戸惑ってる。弟に至っては泣いている。それなのに、私は自分の主張ばかりぶちまけている。

 こんなの、自己中だ。

 ああ、また剥きたくなってきた。

 自分で自分の悪口を言うとき、頭の中で自分の悪口を叫ぶとき、私は皮膚を剥きたくなる。睫毛を抜きたくなる。それを繰り返しているうちに、私の顔はボロボロになった。私はボロボロなんだ。私は汚いんだ。

 私は要らないんだ。

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