9 .僕は洞窟に、怯えながら入る。

「この洞窟には、それはそれは恐ろしい魔王の手下がいるんだ」


 森から出て、洞窟に着いた甲冑が告げた。


「え!?」


 魔王……の手下?

 なんかファンタジーだな。


「果たして君は、無事に帰れるかな?」


 そんなこと言われたら……。


「行かなきゃダメですか?」


「当たり前だ」

「まこさんを助けたくないのか?」


「……助けたいです」


 行かなきゃ。

 僕は覚悟を決め、暗闇に踏み入って……。


「あ、一つアドバイスをやろう」


「なんですか?」


 この甲冑、なんだかんだ丁寧だな。


「ここにいるモンスターには弱点があるんだ」


「弱点……」


 それを教えてくれるのかな?


「それはな……ハグだ」


 真面目なトーンでふざけたことを言われた。


「冗談ですか?」


「ホントだ」


「なんで?」


 意味がわからない。


「モンスターはな、人間に憎しみを抱いている。だから、愛に弱いんだ。特段ハグが効く。もっと言うなら、キスだ。キスしてやったら、倒せるぞ」


「……」


 信じられない。

 ほんとに?

 モンスターにキスって……。


「信じなくてもいいけど、それしなかったら死ぬよ?」


「……」


 死ぬのか。


「それじゃあ、健闘を祈るよ」


 そう言い残して、甲冑は森に消えていった。


 怖いな〜。

 どんなモンスターなんだろ。


 震える足を、暗闇に入れた。

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