5 .僕は森で、オオカミに会う。

「このゲーム……広すぎる……」


 全然目的地に着かない。

 しかも、こんなに広い野原じゃ地図なんて、あってないようなものだよ。


「ホントにこっちかな?」


 果樹園を右に行って……。


「あ、あれかな?」


 目の前に森が見える。

 試練の場所は森の中だ。


「こんなところで、なんの試練を……」


 草をかき分けて……。


「ガウッ!」


「うわぁ!」


 突然なにかに吠えられた。

 あまりに驚いたので、尻もちをついてしまった。


「ハッハッハ! そんなざまじゃ、試練は怪しいな!」


 聞き覚えのある声。


「なんだと?」


 立ち上がって、声の方へ行く。

 少し開けた場所には、やはり甲冑がいた。

 そして……。


「グルルルル」


 オオカミだ。

 初めて本物を見た。


「君には、このオオカミと勝負をして勝ってもらいたい」


 勝負?


「一体なにをするんですか?」


「ほら!」


 甲冑がなにかを投げてよこした。

 これは……。


「木刀?」


「そうだ」


「まさか、これで戦えと?」


「物わかりがいいね」


「そんなの無理です!」


 だって、オオカミだよ!?


「しょうがない、特別ルールだ」

「君は一発でも当てれば勝ちだよ」


「一発……」


 それでも……怪しいな。

 でも、これをクリアしないとまこさんが危ない。


「やります!」


「よし、よく言った!」

「それじゃあ、勝負開始!」


「あっ、ちょっ、そんな急に!」


「ガオッ!」


 オオカミが勢いよく駆けてくる。


「ひぃ!」


「……イチロー、手加減してやれよ〜」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る