第4話

 とある街中。

「それでさ~、……——っ! ねぇ、あの人!」

 ショッピングに来ている女性の一人が、連れの女性の袖を引っ張り、少し離れたところにいる男性を指さす。

「ん? ……うっわ!? めっちゃイケメン!」

 整った顔立ち、丁寧にセットされた髪形、百八十センチを超える身長。一般人とは一線を隠すルックスを誇る男性がそこにはいた。

「だよねぇ~! モデルかなんかかな? むっちゃ背高いし、スタイル超良いし」

「——? なんか、どっかで見たことがある気がするんだよねぇ?」

「じゃあ本当にモデルだったりして!?」

「いや、私雑誌とかあんま見ないし……、あっ! 思い出した! 最近見てる朝ドラに出てる人だ‼」

「マジ‼ じゃあ俳優ってこと!?」

「そうそう! 名前は確か……


 柊 アオト!」







  ◆


 あれから、二年が経った。

 その二年間にはいろんなことがあった。

 毎日筋トレと食事制限を続けたり、身長を伸ばすために睡眠やカルシウムをしっかりとったり、生まれて初めての美容院やエステに行ったり、独学で演技の練習をしたり、滑舌をよくするため毎日発声練習をしたり、親を説得して中学を中退したり、新人俳優オーディションに落選したり、途中で諦めかけたりと、苦悩と苦労の日々を送っていた。

 ——しかし、ついに。

 苦節二年。僕は、



 俳優になることができた。



 といっても、まだまだ仕事はエキストラや脇役がほとんどの新米ではあるけど……。

 それでも最近、朝ドラの主要キャストを任せられたりして、幸先いいスタートを切っていたりもする。

 俳優としていい滑り出しを切っている僕だが、そんな僕にも多くの悩みを抱えている。

 そりゃあ、俳優と言っても僕はまだ十七歳と悩み多きお年頃ではある。

 しかし、今抱えている悩みの種は年齢とは関係ない。

 僕が悩んでいるのは、〝人間関係〟についてだ。



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