畑の復活に集中してもらえればいいですから

ファルトバウゼン王国内でのことは、カリン商会レンガトレント支社のガーラフェイルとウォレンタルマの二人が、私の代理として取り仕切ってくれてた。もちろん、名目上の私の代理は本社勤務のアウラクレアなんだけど、実務についてはガーラフェイルとウォレンタルマの方が理解してるからね。アウラクレアに話を通して、彼女から二人に指示を出したっていう形で対応してもらってた。


でも、二人の仕事ぶりもほぼ完璧だったと思う。特に、「余計なことはしない」っていうのがよかった。


ツフセマティアス卿の領地の村、ツフセフラフトに再び出発する前に早馬を出して、私の留守中に行った決裁やらなんやらの資料を受け取ってきてもらって、村に向かう馬車の中でチェックした様子を見る限りでは順調のようだ。道中の村や町でそれぞれの畑や支社にも少し顔を出して抜き打ちで確認してみたけど問題はなかった。


よし、これでツフセフラフトの復興に集中できる。


更に忙しくなるぞ。ブラドフォンセス王国にもカリン商会の支社を作り、本格的に進出する。


「ホントに戻ってきたんだな……」


ツフセフラフト村に着いたら、途端にブルイドラエフと鉢合わせた。と言うより、毎日、私が通る筈の道に立ってたらしい。告白を決心した中学生か!?


まあいい。それだけ彼が私に期待してくれてるってことだろう。


「今からツフセマティアス卿に最終的な話し合いをしに行くところです。そして卿のGOサインが出れば、今からでも間に合う分についてはなんとか収穫を出せるようにします。


ジャガイモを植える用意をしておいてください」


<ジャガイモ>というのは、本当に向こうのジャガイモにそっくりな根菜で、今の時期に植えれば本格的に雪になるまでには収穫できる筈だった。


土が痩せてしまった今の状態だとあまり立派なものは期待できないけど、土の状態を確認するにも丁度いい。


ただ、この辺りだとそれほどメインに育てられてるものじゃないんだよね。ジャガイモ料理があまり普及してないからか、そんなに需要ないし。でも、だからこそ失敗してもダメージが少なくすむし、むしろ豊作にならない方がありがたいという事情もある。


「ジャガイモだ? そんなもん作ったって…」


と、ブルイドラエフも露骨に怪訝そうな顔をする。


「だからいいんですよ。畑の状態を確かめたいだけですから。とにかく、ホントに畑を復活させるのは次の春以降です。それまでに必要な食料とかはファルトバウゼン王国から支援が届きます。皆さんは畑の復活に集中してもらえればいいですから」


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