みなさんの祖先が育ててきた畑の力を信じてください
さて、いよいよ畑を甦らせるぞ!
準備万端整えて、私はツフセフラフト村の畑の復興に着手した。農民の人達にも集まってもらって、改めて手順を説明する。
「これは、最終的に三年後までには元の収穫量より増やしていくことを目指す為の作業です。来年はそれに向けての準備期間だと思って諦めてください。再来年には元の収穫量に戻る可能性もありますが、絶対ではありません。それまでの間は、ファルトバウゼン王国からの支援で賄うことになります」
私は正直に、現時点での目処を改めて話させてもらった。
とは言え、本当のところ予測では来年にはほぼ従来の収穫量に戻せる可能性もあった。何しろ作付面積を二倍にするから、単位面積当たりの収穫量は半分でも全体でなら例年通りってことになるから。その為の人手は必要になっても、単純に収穫量っていう意味ではそういう計算になる。
ただ、必ずその目算通りに行くと断言できることでないから敢えて少なめに言わせてもらってるというのもある。何しろ彼らからしたらそれこそいつ元に戻せるのかと呆然とするような事態だった訳で、それで言えば再来年に元の収穫量に戻ると私が断言しただけでもすぐには信じられない話だろう。
「本当にそんなに上手くいくんですかい?」
不安そうにそう訊いてくる人もいる。
「上手くいくかどうかではありません。上手くいかせるんです。その為に必要なことをするんです。それには皆さんの協力が必要です。私を信じろとは言いません。みなさんの祖先が育ててきた畑の力を信じてください。みなさんの祖先が育てた畑は、そんなに簡単に駄目になったりしません。そうでしょう?」
『祖先が育てた畑』
私が口にしたその言葉に、その場にいた人達の目の色が変わるのが分かった。
「そうだ…! 俺達の先祖が作ってきた俺達の畑だ。俺達が信じなくてどうする…!?」
「こんなことでへこたれてる場合じゃない!」
「泣き言こぼしてるだけじゃ先祖に怒られちまう!」
「不作や凶作なんてのはこれまでにもあったんだ。俺達にも乗り越えられる筈だ!」
等々。
うん。その意気だよ。農業をする上で根気と忍耐はすごく大事だ。彼らが言ったとおり、不作や凶作の時だってある。それでも諦めずにやってきたから今の畑があるんだ。
これならきっと上手くいく。上手くいくまでやれる。とにかくまずは堆肥作りだ。今度こそちゃんとした堆肥で焦らずやろう。
博打は要らない。素性はいい畑なんだ。そんなことする必要がない。じっくりやろう。
村の人達にはまずジャガイモを植えてもらって、その間に私は、ツフセマティアス卿の協力の下、近くの町にカリン商会の支社を作ることにしたのだった。
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