立派になったね。これからもよろしく頼む
そうやってまた多くの人間から反発を受けそうなことを考えながら、私はクレガマトレンの町へと帰ってきた。一週間ぶりだ。
「おかえりなさい」
そう言って笑顔で迎えてくれたアウラクレアを見た途端、また勝手に涙が溢れてきた。ホッとして子供みたいに泣いちゃったんだ。
「ど、ど、どうしたの? カリン」
泣きじゃくる私を抱き締めてくれたアウラクレアの柔らかくて暖かい胸で、やっぱり私は泣いてしまった。
いい歳をした大人の女としては恥ずかしい限りだけど、何だかんだいろいろあってキャパオーバーになっちゃってたんだよな。
だけど、しばらくそうやってアウラクレアによしよししてもらったら、なんか、嘘みたいにすっきりしてきた。
「ごめん、びっくりさせちゃったね」
「いいのよ。カリンにとってここは、大変なことが多い世界だっていうのは理解してるつもりだから」
ああ、そう言ってもらえると本当に癒される。
で、そうやって癒されて気を取り直したら、とんぼ返りでまたあの村に行くことになる。ツフセマティアス卿の領地にある村だ。本格的に指導する為に。
キラカレブレン卿は、ツフセマティアス卿のところでとどまって、私が戻ってくるのを待ってる。私を手伝ってくれるつもりなんだ。
帰る途中に少し寄って畑の様子を見たら、臭いはすっかり消えてた。土の状態も悪くない。
「…取り敢えず呪いは解けたみたいだけどよ……」
集会の時に私に食って掛かった男の人と偶然出会って、そんな風に言ってもらえたのも嬉しかった。謝ってはくれなかったけど、私が欲しいの謝罪じゃない。理解と協力だ。口先だけの謝罪なんて私は信じない。行動あるのみ。
「いろいろ準備もあるからいったん国に帰って、それから出直してきます。そしたらすぐにここの畑を蘇らせる作業に入ります。忙しくなりますよ」
「ああ……分かった」
彼、ブルイドラエフはそう言って、憮然としながらも頷いてくれた。素直にはなれないし血の気も多いけど愚直なタイプって感じかな。納得してくれればすごく力になってくれる気がした。その為にも結果を出さなきゃ。
クレガマトレンの町を出る前に、私の奴隷達のところにも顔を出して様子を確かめる。みんな真面目にきっちりと仕事をこなしてくれてた。奴隷達のリーダーであるリレも、顔つきが引き締まって成長してるのが分かる。私に対してひどく遠慮がちなのは相変わらずでも、仕事については完璧だ。奴隷達の信頼もしっかり得てるのが分かるよ。
「リレ。立派になったね。これからもよろしく頼む」
「はい。マスターの為に頑張ります…!」
ワイン色の痣に覆われた顔を真っ直ぐ私に向けてそう言えるようになってくれただけでも、私は感慨に浸ってしまうんだ。
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