いよいよリグルベンド・エル・カ・ブラドフォンセス陛下にお目通り
ブラドフォンセス王国の王都への道を辿り、途中もう一泊して、私達はようやくそこに到着した。
王都、ブラドフレイス市に。
そこは、ファルトバウゼン王国の王都、ファルトスツルカ市に勝るとも劣らない活気を感じる街で、この世界では十分に<高層建築>と呼べる四階建て五階建ての石造りの、まるで城壁のような建物が大通りに面して並んでいた。
しかもその大通りは複雑に折れ曲がり、小高い丘の上に立つ王城へは真っ直ぐに辿り着けないようになっていた。
これはあれだな。万が一、敵に攻め込まれたとしてもそのまま王城まではってことを考えられたレイアウトってことだな。戦争によって出来上がった国らしい造りってことか。
その証拠に、メロエリータが、
「見ろ、この道を覆うようにして建てられた家々を。戦争の際にはこれら自体が城壁となって城を守る。さらには非常時には道に向かってわざと倒壊させ、敵の進軍を阻むことができるような構造になっているのだ。この辺りは、互いに助け合い支え合うことを目的に作られた我がファルトバウゼン王国王都ファルトスツルカ市にはない発想だ。
いずれは我々もこれを学び、取り入れねばならんと私は考えている」
と、さすがに軍事関係に強い影響力を持つ派閥に属してる人間らしいと言えばらしいことを私に話しかけたりしてきた。もっとも、この時点の私は派閥のことまでは知らなかったけけどさ。
「へえ…」
それに私はそっち方面は興味もないからよく分からないままに相槌を打っただけだったな。でもまあ街の印象がファルトスツルカ市とは違ってるくらいのことは感じ取れた。
そして軍事に力を入れてるんだなっていうのをすごく感じさせるたくさんの兵士に先導され、私達はいよいよリグルベンド・エル・カ・ブラドフォンセス陛下にお目通り願えることになった。
ただ、私は、ここに来るまでに王都の周りでは殆ど畑を見なかったことが気になってた。街の中にも耕作地が見当たらない。お城に辿り着くまでの道から城下を見下ろしてもあるのは建物ばかりだった。
これだと、周囲を敵に取り囲まれたりしたら食料の確保が難しくなるなと思った。なにしろ、食べられる実がなる木などを植えたりもしてないんだ。日本のお城にも、場内に銀杏の木とかを植えて非常食にと備えてるところがあったりするという話も耳にしたことがあった。
だからこの国では、街に十分な備蓄を行うことを心掛けてるらしいとメロエリータが言っていた。そういう意味でも兵站とか備蓄食料を重視してる国なんだろうな。
その為にも農業の発展と収穫量の上積みは重要な政策の筈だ。
そこを絡めて話をさせてもらえばいいかと思ったのだった。
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