ごめんなさい! 少し考えさせてください……!!
「私じゃ、駄目ですか……?」
真っ直ぐにこっちを見詰めて、静かに、でもはっきりと問い掛けてくる彼に、私の頭の中はグルグルのパニック状態だった。
でもやっとの思いで、
「ごめんなさい! 少し考えさせてください……!!」
と応えて、彼も、
「分かりました。どうかゆっくりと考えてください」
って言ってくれて、その日は引き下がってくれた。
……危なかった…! もし彼があのまま強引に迫ってきたら間違いなく折れてた……!
でも……
……折れちゃっても良かったかな……
なんて、一人になってベッドに仰向けになって考えてしまった。
彼は本当に素敵な人だと思う。向こうじゃあんな男性、私の周りにいなかった。どこかにはいたのかもだけど、少なくとも巡り会える気配すらなかった。それがこうして目の前に現れるんだもんな~。
くそ~……もったいないことしたかな~……?
なんて悶々としてるところに、メロエリータが帰ってきて、
「どうした? 一人身悶えて。自分を慰めてるのか?」
とか訊かれて、
「ぐはっっっ!!」
みたいな変な声が出ちゃったわよ。
で、かくかくしかじか、キラカレブレン卿が部屋に来てお酒を酌み交わして良い雰囲気になったって話したら、彼女は、
「ああ、それは試されたな。それで簡単に落ちるようじゃ、お前、いいように利用されてたぞ」
ときっぱりと言い放った。
ま、マジすか……!?
「前にも言ったが、貴族や王族っていうのは、綺麗事だけじゃやっとれんのだ。時には相手を欺き尻の毛までむしるほどとことん利用することも必要になる。
キラカレブレン卿も、我がファルトバウゼン王国においては有力な貴族に連なる家系の人間だ。決して人がいいだけでやってる訳じゃない。今後、王国内でさらに力をつけていくであろう<カレン商会>と親族関係になれればその力は絶大だろう。
王国としてお前を試したというのもあるだろうが、キラカレブレン家としてお前を取り込みたいという目算はあったと見るべきだな。
もっとも、そんなこと、我がシャフセンバルト家が許さんがな。
カレン。お前だからこそはっきり言っておく。他人は信用するな。特に貴族や王族はな。それは勿論この私も含めてだ。私は、シャフセンバルト家の為にお前を利用している。それを忘れるな。
それに、キラカレブレン家に連なる貴族の一派は、我がシャフセンバルト家が組する派閥とは別の派閥に属しているのだ。それに取り込まれるようなことがあれば、私はカレン商会を乗っ取り、お前を切り捨てることすらするぞ。
心しておくことだ」
「……は、はい…!」
あまりの迫力にそう応えた私だったけど、ここまでぶっちゃける彼女だからこそ、私は一緒にいるんだよ。
あなたは本当に誠実な人だと思う。
メロエリータ……
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