なんだかんだ言ったって仲の良い兄弟なんだな~
雪瓜の種蒔きが終わって一段落付いた頃、兵士達の顔つきが少し変わってきたような気がした。作業の合間に普通に剣とかの訓練もしてたんだけど、その動きにもキレが出てきた気がする。うん、気がする。
だけどその中で唯一、バンクレンチだけは少し元気がない気がした。たぶん、アウラクレアにフラれたからだろうな。
とは言え、その辺の色恋沙汰については私もあんまり経験豊富じゃないし慰めたりとかもよく分からないから、そっとしておくしかないかなと思ったり。
そしたら、作業も訓練も休みの日、バンクハンマが兵士達の臨時の宿舎として借り上げていた家に入っていくのが事務所の窓から見えた。
しばらくするとバンクレンチと一緒に出てきて、二人して町の方へと歩いていく。ちょっと険悪なムードになってたと思ったのに、その姿を見る限りだとなんか普通の仲の良い兄弟だなって感じたりも。
アウラクレアは言う。
「バンクレンチのことは嫌いじゃない……だけど彼にも言ったけど、私、カリンと一緒にこの仕事をするのが楽しくて、まだ結婚とか考えられないの」
私と並んで二人を見送る彼女の顔は、しっかりとした意思を感じさせるものだった。彼女が本気でそう思ってるんだろうなっていうのが分かるそれだと思う。それでも一応、
「…ありがとう、クレア。だけど無理しなくていいんだよ。それにうちは結婚してても仕事してもらっていいしさ」
とは言わせてもらった。
そう。私は、結婚とか出産とか、その辺りのこともちゃんと両立できる会社にしようと思ってる。今はアウラクレアに任せっきりな町の人達との折衝も、いずれはさらに人を雇って分担できるようにしようと考えてるんだ。
でも彼女は私に向き直って、
「私、そんなに器用じゃないから。それに今はまだっていうだけで結婚しないとは言ってないよ。相手はレンチじゃないかもしれないけど」
だって。それで察してしまったかな。レンチはあくまで『いい人なんだけど…』どまりだなって。
う~ん。残念だな~、レンチ。
なんて思ってたら、どうやら兄弟で飲みに行ってたらしく、いや、<飲み>だけじゃないかな…。まあとにかく楽しんできたみたいで、私が顕微魔法で微生物の様子を観察してたところに陽気な声が聞こえてきて窓から外を見たら、ハンマとレンチがご機嫌かつやけに『スッキリ』した顔で帰ってきたところだった。
他の兵士達は隊長さんと一緒に飲みにとか出掛けてたみたいだけどね。きっと、兄弟水入らずってことで気を遣ってくれたんだろうな。
私は酔っ払いは嫌いだし風俗とかにも嫌悪感はあるけど、その時の二人の姿は『なんだかいいな』とは思ったのだった。
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