さすがに何でもうまくいかないか~。とにかく今は試行錯誤だな

雪瓜の栽培が成功すれば、早めに収穫を終える畑で、完全に雪に埋もれてしまうまでの間に雪瓜の収穫も行えるようになる。いわゆる<二毛作>だ。それを完全に行う為には灌漑も必要になってくるけれど、水車を用いて揚水する技術は既に開発されてるから、そんなに難しくないと思う。これまではそこまでしなくても大丈夫な農法を行ってきただけで。


無理せず安定した収穫が得られるのなら、敢えて新しいことに挑戦して収穫を増やそうとまでは思わないというのは人間の心理なんだろうな。万が一失敗した時が怖いし。


堆肥を用いるのだって、アウラクレアがバンクハンマを説得してようやく試してもらえるようになっただけだから。


ここの環境を見るに、堆肥を利用するのは、使い過ぎによる水質汚染が心配だっただけで他に大きなリスクがないことは分かってた。だから私も思い切れた。


雪瓜を栽培して二毛作を行うことも、先に作付けした作物が土から吸い上げた水分を補ってやれればそれほど難しくないのは分かってる。だからこれまでのことは、ある意味ではうまくいって当然のことだったと思う。


休耕地を利用した雪瓜の栽培も順調だった。兵士達も自分達が耕した畑が上手くいってることに手応えを感じてる風だった。


それでもバンクレンチは、


「あ~、やっぱ俺にゃ畑仕事は合わねえや」


とか言ってたけどね。


ただそれも、農家を継ぐのが嫌だと言って軍に志願した手前、そう言わないと格好がつかなかったのもあるかもしれないけどさ。何しろ、あれ以降、バンクレンチとちょくちょく二人で遊びに行ってるみたいだし。


もし、兄弟が和解できたのならそれも収穫かな。


メロエリータとしては、剣の訓練をしている時の兵士の動きが良くなってご満悦だったみたいだけど。


「うふふ、これでお父様も喜んでくださるわ。この調子でどんどん鍛え直すわよ!」


だって。


その一方、すぐには上手くいかない部分もある。


私はバンクハンマの畑に何度も足を運んで、彼と一緒に雪瓜の生育状態を確かめた。すると、元々の産地はさらに寒くて空気が乾燥してるからか、この時期でもまだ暖かすぎるみたいで生育が急激すぎて、実が割れてしまうものがけっこうあった。


種を蒔くタイミングをもう少し遅らせるべきか…?


いや、それだと雪が積もってしまって今度は雪害を受ける可能性が高くなる。元々の産地は気温が低いわりに雪が少ないらしいから、そういう環境が上手く噛み合っているってことか。さすがに何でも上手くはいかないな。


だから、無事に育ったものから種を取り、ここの環境にも比較的適応できてそうなのを選別して次からは植えることにしようか。積極的な品種改良ができればいいんだけど、そのノウハウについてはまだないからね。


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