ホームシックとは違うかもだけど、ちょっと考えてしまうことはある

私は単に知識が多いというだけで、この世界の人達に比べて自分が優れてるとか、私が導いてあげるべきとかは思ってない。『こうなってほしい』という気持ちはあっても『そうならないとダメ』とも思ってない。


だからきっと、私は本当にこの世界を大きく変えることはできないんだろうなって気もしてる。だって、世界を大きく変える人っていうのは、ある意味では自分の考えをグイグイ他人に押し付けて強引に引っ張っていくくらいの独善的で空気を読まないタイプの人だと思うから。


でもさ、だからって現状に甘えてただ流されるっていうのも違うと思うんだ。少なくとも私はそれを良しとしない。


私は、私のできることで世界の変革に挑戦する。結果としてそれが成し遂げられなくてもやるだけやってみる。


人生なんてさ、突き詰めればただの<自己満足>なんじゃないかな。最終的に自分が満足できればそれはその人にとって意味のある人生だったんだよ。


という訳で、私は今日も壮大な自己満足の為に一日を始めるのだった。




バンクレンチ達の連日の<作業>のおかげで、放置されてた畑はすっかり見違えるまでになってた。施肥も済んで、いよいよ雪瓜の種を蒔く。


「失敗しても恨まないでくれよ。何しろ初めてなんだからな」


バンクハンマが私にそう断ってくる。


「大丈夫。『上手くいったら儲けもの』程度にしか思ってないから。ハンマには感謝してるんだよ」


私がそんな風に応えると、彼は照れくさそうに笑った。


な~んて言っても、私とバンクハンマの間で何かフラグが立った訳じゃないから誤解しないでね。彼にはちゃんと奥さんも子供もいるし、本音を言わせてもらうと好みじゃないから。


ただ、仕事をする上で彼の協力があったればこそっていうのは確かにあるからさ。それに、仕事に対する彼の誠実さについては尊敬もしてる。


そうだ。ここの人達は、こと<生きる>っていう部分に置いては今の日本人の多くが忘れかけてるものをしっかり持ってる気がする。


『何の為に生きるか?』ってことを問い掛けるばかりで動こうとしない人と違って、彼らは『生きてるから生きる。細かいことは知らん』という気概があるんだ。『生きてる意味なんて、生き切った後についてくる』って言うかさ。


そういう意味じゃ、圧倒的なバイタリティを感じるよね。


だからって今の日本がダメになってきてるって言ってる訳じゃないよ? 試行錯誤っていうのはいつでもどんな時でもあって、今の日本もその真っ最中っていうだけのこと。そういう時期だっていうだけ。


私はもう元の世界には帰れないかもしれないけど、きっと諦めずに前に進んでくれるとは信じてる。


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