自分の町は攻略できたし、さ~て、次の町を攻略するぞ!
それやこれやで<カリン商会>は立ち上がり、この世界の飢餓をなくそうという私の野望は大きく動き出すことになった。
そしてさっそく、メロエリータが住む別荘のある町にもそのシステムを導入するべく、彼女は動いた。
とは言っても、この頃には既に私達の住む町、クレガマトレンでの成功の話は大きく伝わっていて、向こうの方が乗り気だったみたい。
しかもその町、レンガトレントにもマイトバッハ町長の元教え子がいたこともいい形で作用してくれたようだ。
そんなマイトバッハ町長の元教え子、ガーラフェイルとウォレンタルマが、私達の仕事を学ぶ為の研修を受けにやってきた。
ガーラフェイルは見た目も振る舞いも絵に描いたような<肝っ玉母さん>で、六人の子供を育て上げたという女性だ。『細かいことは気にすんな!』が口癖だけど、豪快そうな印象とは裏腹にきめ細やかな気配りのできる女性でもあった。
もう一人のウォレンタルマは、物静かな<学者タイプ>の男性で、ガーラフェイルとは古くからの知り合いなんだとか。私の研究にすごく興味を持って熱心に説明を聞いてくるから、堆肥そのものの品質管理と施肥についての注意事項とかを管理監督してもらうことになる。
この二人が、<カレン商会レンガトレント支社>を運営してくれる形だ。
そちらもシャフセンバルト卿の領地内の町だから、当然、メロエリータの影響力は絶大だった。彼女の言うことに逆らう者もおらず、レンガトレントの町長も彼女の指示通りに動いてくれた。そちらでも私達の町のシステムをそのまま導入する。
でもまずは、ガーラフェイルとウォレンタルマにちゃんと仕事を理解してもらわなくちゃね。
「あなたも元気そうで安心したよ。クレア」
研修初日の夜、私達の家で一緒に夕食をとることになったその席で、ガーラフェイルがアウラクレアに向かってそう言った。
実は彼女は、ネローシェシカの友人でもあり、アウラクレアが生まれた時には既に二人の子供を育てていたことで、<母親としての先輩>でもあったらしい。アウラクレアのことはそれこそ彼女が生まれる前から知っていて、初めての出産に不安になっていたネローシェシカの相談相手にもなってたって。
だから彼女が亡くなった時には、残されたアウラクレアのことをすごく案じてくれた一人でもある。まあその頃は彼女の子供の一人が病気で大変だったこともあって顔を出すことさえままならなかったそうだけど。
「ごめんね。力になれなくて…」
ネローシェシカが亡くなった時に顔も出せなかったことをガーラフェイルはそう言って詫びた。その姿に、ネローシェシカ自身がどれだけたくさんの人に慕われてたのかを改めて感じたのだった。
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