神輿は馬鹿で軽い方がいいっていうことか~?
「カリン! せっかくだから会社を興そう!」
私のパトロンとなって経済的な援助を行うと勝手に決めたメロエリータは、次にそんなことを言い出した。この頃の会社というのは、私達がイメージするのとは少し仕組みが違うけど、まあ、『商売でお金を稼いで利益をみんなで分けよう』という意味ではまあそんなに違わないのかな。
こちらの世界ではまだ、明確な<株式会社>というものが存在しなかったみたい。でもメロエリータが考えた資金調達と利益分配の方式がまさに株式会社のそれで、今後、あちこちでその方式が取り入れられることになって、実は私達がこの世界における株式会社の起源ということになるらしいけど、そちらについては私は詳しくないからあまり触れない。
それに、メロエリータのアイデアは元々彼女自身が考えていたことで、それを活用する絶好の機会として私のやろうとしてることに白羽の矢が立っただけみたい。だから、私と知り合ってなくても彼女は他の事業で結局は株式会社を作ってたんだと思う。
そんな訳で、私とアウラクレアとメロエリータが発起人になって、<カリン商会>が設立されることになった。
もっとも、会社経営そのものは私もアウラクレアもさっぱりでメロエリータの独壇場だったから、私は正直言ってただの研究者兼形だけの代表者だったけどね。
あと、リレ達奴隷は、そもそも人間として扱われないから、牛や馬と同列の、会社の備品という形だった。この辺りもこの世界の事情を考慮すると仕方ない。
私が『三人で会社を興した』と言ったのは、ここではそういう言い方でないと通じないからだ。それでも、気持ちの上ではリレ達十八人の奴隷も合わせた二十一人が最初のメンバーだと私は思ってる。
ま、アウラクレアに対する遠慮もあるし、奴隷を毛嫌いしてないメロエリータも、本気で人間としては見做してないことは分かってた。あくまで自分が大事にしてる牛や馬と同じ認識なんだよ。
だけどそれでもいい。そこが第一歩だから。
こうしてこの町での堆肥の回収と農家への分配、それと施肥に関する指導監督を、会社として行うことになった。顧客は町そのもの。町として作物の収穫量を上げて多くの税を納められるようになればそれが町自体の利益となり、私達はその為のシステムを提供したという形になる。そのアイデア料とシステム運用の代行手数料が<カリン商会>に支払われるという訳。
現在の出資者はメロエリータだけなので、私とアウラクレアとメロエリータの利益(必要経費を差し引いた純利益)分配率は、一対一対八。
でもまあ、私の取り分も実際にはけっこうな額だから、別に不満はなかったのだった。
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