メロエリータこそがチートキャラってものかもな~

メロエリータは、本当に変わった女の子だった。いや、『貴族としては』という意味で変わってると言うべきか。


初めて訪れてから一週間も経たないうちに、普通のメイドが着るような服を着て、貴族が普段使うような上等なそれじゃなくて、町で一般的に使われてる荷馬車に乗って毎日通ってくるようになった。


しかも、シャフセンバルト卿のお城から通うのは大変だっていうことで、ここよりは少し大きな隣の町の外れにある別荘に移り住んでしまったらしい。


嫁入り前の娘によくそんなこと許したなと思ってると、メロエリータは言った。


「私の父上と母上は、成長が遅れてる私を憐れんで、自由にさせてくれるのだ。


なに、家のことは兄上や姉上達が立派にやってくれている。私はただのミソッカスで、生きようと死のうとシャフセンバルト家には何の影響もない。少々何かをやらかそうとも、呪いの穢れを受けた忌み児いみこのしでかしたこととして、かえって同情してもらえるというものだ」


「忌み児…?」


「ああ、父上も母上も、私のこの体は呪いによるものと考えている。シャフセンバルト家を妬んだ何者かの呪いによるものだとな。もっと早くにこの体のことを父上や母上が気付いていたら、私はきっと捨てられて奴隷にでもなっていただろう。社交デビューの後だったから体裁を気にして辛うじて免れただけだ。だから私にとって奴隷は他人とは思えんのさ。


だが勘違いするなよ? 父上も母上も立派な人物だ。私のような忌み児にもきちんと教育を与えてくださって、自由奔放に振る舞わせてくださるのだから。今だって僻地の荒れ城に幽閉することもできるのだぞ。


ただ、貴族の社会というのもいろいろあってな。人がいいだけではやっていけんのだ」


思わぬ告白に、貴族と言えどもそれはそれで厳しいものがあるんだというのを私は実感させられていた。そしてそれと同時に、メロエリータに対する認識が更に変わっていったんだと思う。


彼女に比べれば、私もアウラクレアも本当にただの<凡人>だ。メロエリータを主役にした方がよっぽど痛快な物語が作れたんじゃないかとさえ感じる。


ああでも、彼女のようなチートキャラを味方に付けられた時点で、私もたいがいなのかな。


二回目に訪ねてきた時に、私が今やろうとしてることを詳しく説明させてもらったんだ。顕微魔法で様々な微生物がどんな風に魔法を具現化させてるかを実際に示しながら。そしたら彼女は、


「お前の研究はきっとこの国の役に立つ! 私は天啓を受けた! 私がお前のパトロンになってやる!!」


って興奮しながら言った。


こんな簡単に貴族の後ろ盾を得られたんだから、十分にチートなのかもしれない。


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