人権人権と煩く言う気はないけど、少なくとも他人を妬むだけの人間ではいたくないわね
「みんな起きて! 仕事よ!」
奴隷達の朝は早い。夜明けと共にリーダーのリレに起こされて、一日が始まる。
リレは本当に優秀だった。本人が仕事できるのもそうだし、大人しそうに見えて実は強情なところがあるし、真面目だから何でもしっかりやろうとする。後輩達をちゃんと指導監督しなきゃっていう意気込みも強い。
新たに買った奴隷十七人は、みんな女の子だった。下は十二歳から上は十七歳まで。みんな外見とかに<難>があって売れ残ったり売れる当てのない子達ばかり。
リレと同じように、顔や体の目立つところに大きな痣があったり、手足が妙に曲がっていたり、指が何本かなかったり。言葉すら話せなくていつもぼうっとしてて、明らかに重度の学習障害だなっていう子もいた。
それらも、先天的なものや、たぶん虐待か何かの痕だろうなっていうものと、様々だった。
こういう子達にとっては、今は生き難い世の中なんだろう。地球だってまだまだ生き易いとは言えないと思う。だけど、こういう、分かりやすくハンデのある子達でさえ頑張ればまっとうに生きていける世の中じゃなければ、パッと見分かりにくいハンデを抱えた人が生き易い世の中になんてならないと私は感じてる。
ハンデのある人に優しい世の中にしようとしてるのを『逆差別だ!』とか言ってるのなんて、ただの僻みだとしか私は思わない。自分こそが救われたいのに手を差し伸べられないことを妬んでるとしか思えない。
もっとも、高校の頃までの私も、実はそんなことを思ってた人間の一人だったけどさ。
だけど、大学の先輩とか教授とかと出逢って私は知ったの。そういうのがただの僻みや妬みでしかないってことを。他人が手を差し伸べられてるのを羨ましがって拗ねてるだけだっていうのを。
この世界で理不尽に虐げられてる人達を解放できるかどうかなんて私には分からないし、たぶん、そこまでのことはできないと思う。でも、彼女達の力が今の私には必要なの。その力を借りた分の対価は、きちんと払いたい。それこそが、彼女達を、私だけでもちゃんと人間として扱うということ。
ただの自己満足かもしれないけど、ロクでもない親の下に生まれた私だって救われたんだ。彼女らが少しでも『生きてて良かった』って思ってもらえるなら私も嬉しい。
荷車を引いて手分けして、堆肥の回収に当たってもらう。そしてそれを、農地へと運ぶ。それが彼女達の仕事。その対価を、私は彼女達に支払う。
まあそれはそれとして、いずれはちゃんと保管用の設備も用意しないといけないけど、今のところはまだ、供給した堆肥を作付に合わせて順次施肥していく段階かな。
どうしても呪文のミスとかがあって未熟な堆肥が混じってしまい、改めて完熟させる必要があったりっていう細かいトラブルはあるけど、それでも大まかな仕組みは出来上がっていったのだった。
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