俺TUEEEEEEE!の何が悪い!? そんなの、何事も成し遂げられない人間の僻みよ!
町での、ウンチ堆肥化計画は、マイトバッハ町長の協力が得られたことで一気に進んだ。町をいくつかの区画に分けてそれぞれを農家に割り当て、そこで出た堆肥を使うという形で落ち着いた。それは、町長の提案だった。
この世界にはまだ、<議会制民主主義>というものは定着していないらしい。この町も、ある貴族の領地だった。しかし貴族が自らすべての領地を管理する訳にもいかず、それぞれの町や村で力を持つ者を代理の為政者として置くことで統治している形だった。
マイトバッハはその人柄と人徳で町民の支持を受けて町長になっただけあって、住民も皆、概ね協力的だった。この点においても、ここに住むネローシェシカに拾われたのは本当に幸運だったと思う。なるほどこれが<主人公補正>というものか。
…いや、ちょっと違うかな。そうやってたまたま上手くいった者をピックアップしてそれを<主人公>と称して物語を組み立てるから、主人公に都合のいい展開に見えるってだけで。
現実世界でも、何か大きなことを成し遂げた人とか、とんでもない危機を生き抜いた人とかって、きっと、常識では有り得ない幸運や強運としか言えないものがあったんだろうし。
何しろ、某爆撃機魔神閣下や、妖精のスナイパーさん、現代でも歴代最強棋士さんとか、ノンフィクションなのに常識外過ぎてフィクション以上に嘘くさくなるって言われてる実在の人物だっているんだから、正直、フィクションでの俺TUEEEEEEE!なんて、いちいち噛み付く必要も感じないわね。
ちなみに女なのにどうしてそんな話を知ってるかと言えば、小学校の高学年くらいから中学に掛けての一時期、ハマってたのよ。その手のビックリ人間奇譚に。たぶん、ストレスの捌け口を求めてたんだろうなあ。
いや、ただの中二病かも知れないけど。
まあそれはさて置き、私はそこまでトンデモ人間じゃないとは自分でも思ってるし、だから他人の力も借りるの。私にできないことは他の人に任せるの。そうして結果として目的が果たせればそれでいい。
私の目的。
それは、この世界から飢餓を無くすこと。
ネローシェシカの命を奪った戦争のきっかけになった飢餓をね。
本当は『戦争を無くしたい』って言いたいところだけど、この世界においてもそれは、生きる為にやむなく他国を侵略するっていう形の戦争だけじゃないということくらい私にも分かってる。だからそこまでは言えない。
でも、単位面積当たりの収穫量を増やし、かつリスクを分散することで、飢餓を減らすことは十分に可能だと思う。
確かに地球でもいまだに飢餓を無くせてはいないけど、そもそも目指さなきゃ何もできないからね。
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