隙あらばこういう話に持っていこうとするとか、私もまだまだね!

ネローシェシカの娘、アウラクレアは、私が保護されて初めて会った時はまだ十五歳だった。と言っても、成人として認められる十六まではあと一年な上に、その時には既に『Oh!ダイナマイッ!!』な感じの<ビッグブレスト>だったから、まあモテるモテる。家のポストには毎日恋文や贈り物がぎっしりだったわよ。


この世界の<魔法>は、何度も言うようにあくまで本人の体質に殆どの素質が依存してるし、多くの人が多少は持ってるものだから、<恋文の魔法>とか言って、字が書けないのにラブレターが書けたり、<判読の魔法>で読めちゃったりするのよね。ウンチやおしっこを処理するのも、殆どの人は自分でできる。


ただ、どの程度の魔力を発揮できるかっていうのも体質に大きく左右されるから、<魔法使い>と呼ばれるくらいに自在にいろんな魔法が使える人は、数百人に一人くらいって感じらしい。


魔法使いに認定されるには一応試験もある。でも適性のない人はどんなに頑張っても無理。そして、アウラクレアも、その適性がなかった。ウンチを土のように変えたり、判読の魔法で手紙を読んだりくらいはできるけど、ネローシェシカのように<魔法使い>として身を立てるには全く足りなかった。


アウラクレア自身は、そのことで悩んだりしたこともあったみたい。母親のように立派な魔法使いになりたかったのにそれが決して叶わない願いだってことで。


だから、私に魔法の素質があるのが分かった時には、急に態度がよそよそしくなったりしてギクシャクしてた時期もあった。だけど、ネローシェシカの訃報を聞いた私が、娘のアウラクレア以上にショックを受けて泣き崩れたりしたものだからそこからまた関係が修復されていった感じかな。


アウラクレア自身はこの世界の人間で、魔法使いが戦争などに赴いて命を落とすこともあるのを知ってた分だけ覚悟もできてて、でもだからこそ取り乱すっていうのが世間体としてできなくて、私がその代りをしたみたいになったから。


ちなみに彼女のお父さんは軍人で、そのお父さんも彼女がまだ小さい頃に戦争で亡くなってた。そう、ここはそういう形で人が命を失うことのある世界。決してファンタジーでファンシーな<夢と魔法の世界>じゃない。


でも彼女は言ってくれたの。


「カリン……ママの為にそんなに泣いてくれるあなたは、私の家族なんだね……ありがとう……」


そう言って抱き締めてくれた彼女の胸で、私は泣いたの。たぶん、実の家族が死んだって泣いたりしないだろうなと思ってたのに……


私はこの世界に来て、初めて<家族>って言えるものを手に入れた気がする。




…って、何しんみりしてんじゃーい!!


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