文化が変わるとトイレの形式も変わるから戸惑うわよね~
正直、馬のウンチが魔法で処理されたのを見た時には、単に町中がウンチまみれじゃないと推測されたことで安心してしまって深く考えなかったんだけど、ネローシェシカに保護された当日、ホッとした途端に催しちゃって、トイレを借りたんだよね。
そのトイレは、個室の中に備え付けの椅子があって、座面に穴が開いてて、その下に<おまる>を置いてウンチやおしっこを受けるタイプだった。今でも介護用のとか災害時に使われる簡易トイレとかでは見られる形かな。さすがに初めて見た時には躊躇ったけど、個室の中自体がとてもきれいに掃除されてて、その点では安心した。
ただ、私は当然、その時点ではウンチを土に変える(厳密には土じゃないけど)魔法は使えなかったからどうしたらいいのか戸惑ってると、外からネローシェシカが、
「あなたはまだ魔法が使えないのよね。ちょっと待ってて」
と声を掛けてきて、外から魔法をかけてくれて、私が出したのは無事、カッサカサのパサパサのに変わって、トイレの窓から裏の川に捨てることができたのだった。
最初はその感じで、トイレに入る度に彼女に手伝ってもらってた。でも二週間が過ぎた頃、教えてもらった呪文を唱えてみたら見事に成功して、「おーっ!」と思わず歓声を上げてしまったり。
でもそれでようやく気付いたのよ。
『それにしてもどうしてここまでカッサカサのパサパサに?』
ってことに。
それ自体はまあ後で顕微魔法を使って変化を確認した時に、有機物が徹底的に分解された上に水分が飛んでしまうことでそうなるってことが分かったんだけど、それと同時に、堆肥として使うには重要な、アンモニアが変化してできる硝酸塩っていう成分がさらに分解されて窒素ガスとして大気中に放出されてしまうらしいってことが分かったのよね。こうなると堆肥としては使いづらいものになってしまうの。
植物が生育する際には窒素が必須なのにその窒素を含む成分が減っちゃうんだもん。
ただこれは、川とかに流して捨てる場合にはその方がよかったっていう一面もあるのよ。過剰な硝酸塩は水質汚染の原因になるから。
まあここであんまり専門用語並べて詳しく説明したって喜ぶのは一部の変態だけだろうからほどほどにしとくわ。
いずれにせよ、ここの人達はあくまでウンチやおしっこは利用せずただ捨てるだけっていう認識が定着しちゃってたって訳。
地球の中世ヨーロッパでも実はウンチやおしっこを肥料として利用する考えがない訳でもなかったらしいけど、とにかく大量に出るそれを農地へ運ぶ方法も満足にない状態では現実的じゃなくて、結果として道端に捨てるしかなかったみたい。
そういう意味での恐ろしい地獄絵図は回避されてても、ただただ捨てるだけっていうのはやっぱりもったいないよね。
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