第4話 スティーブンさん
次の日の朝、ミミは幸せな気持ちで目覚めました。(もう、一人じゃないんだ。)お日様がとんがり山の向こうに顔を出しにっこりとミミを見守っていました。
「ミミ、あの小麦畑に帰ろう。私は元居た場所が一番だと気づいたんだ。」とトトは言いました。「でも、秋になると毎年巣穴は壊されちゃうんだ。」とミミは少し悲しくなりました。「大丈夫。お父さんが巣穴の作り方を教えてあげるからね。ミミもすぐ自分で作れるようになる。」とトトは慰めました。
帰る途中、サラサラ川を横切りました。「ザリガニのサリがお父さんの居場所を教えてくれたんだ。」とミミはトトに言いました。「そうか、サリにお礼を言わないとね。」二匹はサラサラ川に近づきました。その時!急に現れた大きな網の下敷きになり、二匹は動けなくなってしまいました。「あ、ウサギキツネ用の罠にひっかかっちゃったよ!」人間の男の子の声が遠くから聞こえてきました。その声はだんだん近づいてきて、ミミとトトはもういっかんの終わりだと思いぶるぶる震えました。」
「このウサギはもしかして、お父さんの小麦畑に住んでいるウサギたちじゃないかな」と男の子は後から来た大人の男の人に聞きました。「ほんとだ!あのウサギじゃないか!ほら、大きいほうのウサギは耳の毛が白い。よく、小麦畑でみるやつだな。子供がいたのか。」実はこの二人組は、あの小麦畑の持ち主のスティーブンさんと息子のジョンでした。「可哀そうに、震えているじゃないか。」とスティーブンさんは網を持ち上げてミミとトトを逃がしてくれました。ミミはすぐに逃げ出しました。しかし、トトがついてきません。ちょっと離れたところにミミは立ち止まりました。トトはスティーブンさんをじっと見つめました。「なんだい、このウサギは。俺に何か伝えたいことがあるのか?」スティーブンさんは不思議そうに考え込みました。「わかったよ、お父さん。このウサギは毎年秋の収穫の時、巣穴を追い出されているだろ?それをやめてほしいんじゃないかな?」とジョンは言いました。「そうだそうだ。賢い子だ!」とトトはうなずきました。「ほら!うなづいているよ。僕の言った通りだ!」ジョンはスティーブンさんより先にトトの言いたいことに気づいて得意になりました。「ほんとだな。うなずいているよ!なんということだろう。」スティーブンさんはウサギと会話が通じることに驚きました。「ウサギだって立派な隣人だ。隣人のために、1平米くらい小麦の収穫が減ることくらいなんだっていうんだ?俺はなんてケチな人間だったんだろう。」スティーブンさんはとても反省ました。「よし、ウサ公、これからはお前たちの巣穴は壊さずにいてあげよう。」スティーブンさんとトトは約束をかわしました。
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