第3話 とんがり山
とんがり山のふもとはススキがサラサラ風に揺れていました。太陽は西にかたむき、ミミは少しさみしくなりました。「お父さん、どこにいるのかなぁ」
「ミミ!ミミじゃないか!」突然大きな声で名前を呼ばれたのでミミはびっくりぎょうてん。慌てて近くの岩の陰に隠れていしまいました。「隠れてないで出ておいで、お父さんだよ。」なんと、声の正体はお父さんのトトでした。「すっかりおおきくなったな、ミミ。」トトは優しくほほえみました。「ほんとに僕のお父さん?」ミミは岩の陰から顔を出し、恐る恐る尋ねました。「ほんとだよ、この足を見てごらん。」トトはミミそっくりの大きくて力強い足を見せてあげました。「この耳を見てごらん。」続けてトトはミミよりも少し白い毛が混じった長い耳を見せてあげました。「ほんとに僕のお父さんだ!」ミミはうれしくなって岩から飛び出しました。「お父さん、僕の巣穴がなくなっちゃったんだ。だから新しい巣穴の作り方を教えてほしくて会いに来たんだ。教えてくれる?」とミミはトトにお願いしました。「もちろんだよ!今までそばにいてあげられなくてごめん。実はあの小麦畑は毎年秋になるとトラクターが実った小麦を刈り取りに来るんだ。お父さんはあの小麦畑よりもっといいところがないか、探していたんだよ。」「そうだったんだね。ところでなんでそのことを僕に秘密にしていたの?」ミミはずっと聞きたかったことをやっと聞けました。「ごめんな。お父さんのことを知ったらミミは必ず私を探しに来てしまうと思ったんだよ。でもミミはまだ小さく旅に出るには危険だったんだ。だからオウルにはミミが大きくなってから私のことをミミに教えてあげてほしいってお願いしていたんだ。さみしくさせて悪かったね」トトに言われて初めてミミは自分がさみしかったんだと気づきました。「小鳥のピッピやアナグマのチコがいたけど、夜に一人で眠るときは僕、さみしかったんだ。」ミミはトトの腕の中でちょっぴり泣きました。お空にはもう一番星が光っていました。
その夜、二匹はススキ野原に並んで寝ました。お月様は優しい光であたり一面を照らしました。
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