伏線回収

 ジョシュアは、ミラのいるところまでよじ登っていく。


「ボクがリトルアーミーで、ミラを助け出す!」


 おもちゃの兵隊を大量に召喚して、上に上がらせた。


 ミラのツタが切れたときに、キャッチするのである。


 切っても切っても再生するツタだとしても、リトルアーミーの数なら。


「アタシはどうしたらいいのよ?」

「リヨ、キミは特大の炎で、この世界樹を焼き尽くすんだ!」


 思わぬ提案に、リヨは顔をしかめた。彼女は『氷魔法系』の使い手だから。


「炎なんてどこに……あったわね」

「そうだろ? 初めてあった頃のことを思い出せ!」



 幼少期に、ジョシュアはリヨを召喚した。



 理由は、バラ園が火事になったからである。


 リヨに炎を食ってもらって、事なきを得た。言葉を話せるようになったのも、リヨが炎を吸い込んだからだろう。


「さっさと助け出しなさい。特大の炎で抱いてあげるわ!」

「そうしてくれ」


 ようやく、ミラの元へリトルアーミーが到達した。ツタを切り裂く。


「ミラ、こっちにダイブして!」


 ジョシュアの元へ、ミラがふわりと落ちてくる。


「ぐおっふ!」


 ミラをキャッチした瞬間、ジョシュアは背中を地面に打ち付けた。小さくて細身といえど、スピードが乗ると重い。


「今だリヨ、やれえええ!」

「やってやるわ! ファイア・ブレス!」


 全身に眠るありったけの炎を、リヨが吐き出す。


 世界樹はその魔力量も相まって、炎を飲み込んでいった。リヨの魔力も吸い取ろうとして、引火してしまったのだろう。


「さあミラ、こっちだ!」


 ミラと手をつなぎ、研究所の外へ。


 炎に追いかけ回されながら、ミラとともに逃げ出す。


 研究所が、火に包まれる。


「おいリヨ! どうしたんだ!?」


 呼んでも、返事がない。


 研究所のガレキが落ちて、リヨの様子が見えた。リヨはずっと、世界樹のツタを掴み続けていたのである。ジョシュアたちを逃がすために。


「リヨ! もういいんだ! 逃げるんだよ早く!」


 ジョシュアが呼びかけた。


 しかし、リヨは振り返って笑うだけ。いつものように、口を吊り上げた生意気な笑みで。


「だめだリヨ! 戻ってこい! まだ決着は付いていないんだぞ!」


 必死でジョシュアが呼びかけても、もうリアクションすらしない。


 そのままリヨは、世界樹と運命をともにした。


 リヨも世界樹も、崩れ落ちた研究所の下敷きになって見えなくなる。


「バカヤロウ! リヨ! お前がいなかったら、誰がボクとケンカしてくれるんだよぉ……」


 消防車のサイレンを聞きながら、ジョシュアは地面に泣き崩れた。




 


 数日後……。


「アオウ オオウ!」


 病室のベッドに顔を出すと、そこにはナースとよろしくやっているリヨの姿が。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る