バカにしてくるクラスメイトに鉄槌を

 以後、ジョシュアは魔法の訓練を受けては、リヨのシッポに抑え込まれる毎日を送っていた。


 そんな日が、三ヶ月ほど続く。


 ある時のこと。ジョシュアはいつものように、リヨにタコ殴りにされていた。


「もう、あきらめたら?」

「なんの。これくらい」

「アンタとアタシの実力差は、そんな簡単に埋まらないって」

「勝てなくてもいい。せめて土をつけるくらいには強くなりたい」


 ズボンに付いた草を払って、ジョシュアはまた殴りかかる。


 しかし、渾身の右フックはスカった。カウンターで投げ飛ばされる。


「うーん、なんで当たらないんだろう?」


 草むらで大の字になっていると、リヨの脚が腹に乗っかった。


「スピードは早くなったけど、狙いが中途半端なのよ」


 リヨが、ポヨポヨの腹を踏んづける。


「おいおいやめろって」

「あー、気持ちいい。ネコの肉球触るよりいいわ」


 どうにか振りほどこうと、ジョシュアはもがく。


「アハハ! だっせ!」


 学校のクラスメイトが、リヨに足蹴にされているジョシュアを見て笑った。


「あいつペットにいいように翻弄されてるぜ! 情けねえ!」


 一番長身のイケメンが、ひときわジョシュアを罵倒する。


「今なんて言ったのガキ?」


 その長身の首を、いつの間にかリヨが掴んでいた。軽々と持ち上げる。


 一瞬でこちらまで移動してきたリヨに対し、クラスメイトたちが怯えきった。


「放せよ! 召喚獣の分際で!」


 脚をバタバタさせながら、長身のクラスメイトがリヨにつっかかる。


「人の分際で、このフェンリルに楯突くの?」


 フェンリル、その名を聞いてクラスメイトたちが凍りつく。その気になれば、スナック感覚で街を氷山へと変えてしまえる怪物を前にして。


「アンタたちがバカにしているコイツは、このフェンリル様を呼び出したの? アンタたちのパパママでさえ、束になってもかなわないでしょうね? なんなら試してあげてもいいのよ?」


 イケメンの首筋に、本当に冷気が流れ込んだ。凍らせる気だ。


「いいこと? ジョシュアをからかっていいのはアタシだけなの。もし彼をおちょくってみなさい。その首が雪だるまの頭になるから。親に言いつけるのもナシね。あなたたちだって、大切なご家族を氷像になんてされたくないでしょ?」


 リヨに脅されて、イケメンは涙目になりながら何度も首肯した。


「よくできました」


 氷魔法を解除し、リヨがイケメンから手を離す。


 クラスメイトたちは、怪物を見る目で逃げ出した。


「アンタたち! 今度、ウチのジョシュアと試合なさい! 勝ったらアタシがさっきのことを土下座してあげる! 期日は明日!」


 ジョシュアたちとの距離が遠くになって、クラスメイトたちがジョシュアに中指を突き立てる。


「そんな約束していいの? ボク、殺されちゃうよ!」

「いいわ。あんな子は本気で叩き潰さないとわかんないから。殺すつもりで、おやりなさい」


 

 翌日、魔法科学校で助手後クラスメイト三人との決闘が行われた。


 みんな、クラスメイトを応援している。誰もジョシュアなんて見ていない。


 ミラだけが、ジョシュアに声援を送ってくれていた。


 リヨはのん気に観客席で足を組んで、隣の女子を口説いている。


「いいの?」


 リヨに、ジョシュアはアドバイスを求める。


「好きにおやりなさい。相手は三人もいるのよ」


 無情にも先生が立ち会い、本番に。


「ファイアーボ」


 相手が魔法を撃ち出す瞬間、ジョシュアは飛び出す。脚に魔力を貯めて加速した後、魔力のこもった拳を三人に叩き込む。


 勝負は、一瞬で決まった。リヨと戦うより、簡単な動作でしかない。本当にジョシュアは、クラスメイトたちを叩きのめしてしまう。


 観客席が、静まり返っていた。

 ミラだけが、手を叩いて喜んでくれている。

 

 リヨが特訓してくれた成果もあり、ジョシュアは学校でからかわれなくなった。

 

 同時に、孤立してしまったが。

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