一瞬、目を丸くしたが、直ぐにまた、横を向いてしまった。



「今、関係ねぇだろ?」


と、髪をかきあげる。



「…知りたい」



すると、1つ息を吐いて話し出した。


本当、優しいよ…。



「如月には、こう伝えた。 オレは、葵さんのそんな姿を見たとしても、葵さんの事嫌いにならないし、葵さんだって、そんなものでビビったりしない。そのせいで、如月がそんな事になってたとしたら、なおさらだって…」



うわっ…


この状況下で申し訳ないが…



「…すまん。嬉しい」


「……そうかよ」



照れたように、再び視線を逸らす。


そんな姿を見ても嬉しくなってしまう。



「ところで、愛ちゃんは、何で、オレに相談しなかったんだ?」


「ああ。それなんだが…葵さんを自分の事で煩わせたく無かったんだってさ。好きなひとの事だけを考えていて欲しかったって…。」



ぇ…っ?




…何…?




何だよ。何だよ…っ…それ…


聞いてないよ……知らないよ…



そんな……一年経って…今頃知ったって…  


そんな理由…知らなかったじゃ済まない。



オレ……そんな…知らないから…



愛ちゃんが…自分の身体を犠牲にしている間…オレ…自分の事ばっかりで…


これまでの日常は、愛ちゃんが身を削ってオレに与えてくれたもの…



あんな小さな身体で、オレの分まで背負ってたのか…



「……酷いな」



酷いヤツだな……オレ… 




「ごめん……オレのせいだな。

オレの詰めの甘さだ……一年前もそれが原因だったのに…」

 

「葵さんは、優しすぎ……つーか、誰にでもいい顔するからね」


「……?!」


「サービス精神が、あり過ぎなんですよ」

 

「何…言って_」 



何の話だ?



「じゃ何で、如月の頬にキスしたんだよ!」

 



は?




「キスする必要あったのかよ……」

 



ああ。




苛立ってる原因は、それか?



そうか……。



抜く行為は、良くて、キスはダメか。


頬でもダメか… 



そうか…



なんだ…やっぱり好きなんじゃん。



オレは、紫津木に似ていたからキスしたと、正直に告げてから、

愛ちゃんにはキスしたのか、訊いてみた。



……が、



紫津木の口から出てきたのは、意外な答だった。




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