この後……



紫津木が、男を好きになった事を知った。



相手の事は訊かなかったけど…


恐らく、愛ちゃんだ。




オレ……普通だったか?



いつものように、笑顔で背中を見送れたか?



しばらく会いたくない。つか…会えねぇ。

こんな顔で。

兄貴の顔に戻れない…



取りあえず、明日は仕事が入ってない。


その間に気持ちを切り替えないと。




そう思ったのに、

 

オレの気持ちが全くわかってないアイツから電話があった。


オレに相談したい事があるそうだ。



……愛ちゃんの事なら…キツいな。





紫津木が通う学校近くのカフェで待ち合わせ。



外で会うのは初めてだな。


まあ…デートではないが。


 

学校近辺で、モデルの顔になるのを嫌ってた紫津木。

だから、マネージャーのオレをこんな近くまで呼び出すという事は、余程の相談なんだろうと思うが、それが愛ちゃん絡みだった場合、オレは冷静でいられるのか…?



紫津木からLINEでもらった地図と、カフェの前に出ている黒板のメニューを交互に見ながら確認する。


ここで間違いない…よな?



「ぁ…あの…板垣葵さん…ですか?」



振り向くと、紫津木と同じ高校の制服を着た女子高生が2人、オレを見上げていた。



「…そう…だけど…?」


「きゃっ…やっぱりそうだ」



ぁあ…思い出した。この感じ。久しぶり過ぎて、忘れてたな。


 

「あの…今日はプライベートですか?」



2人共、頬を染めて、お互いの顔を見やったり、オレの顔をチラッと見たり…。



「ぁ…あのさ…『森のお家』ていうカフェは、ここでいいの? 紫津木と待ち合わせしてんだけど?」


「…はい!ぇ…と、紫津木君、ここ良く利用してますよ」


「へぇ…そうなんだ。ありがとう」


と、愛想良く笑顔を振りまいて中に入ろうとすると、そのコ達に引き止められてしまい、握手やら写真やらを撮り、今度こそ中に入ろうとすると、入り口付近で同じ制服の女子達に捕まり、「取りあえず、中に入れてね」と、極力優しくお願いして中に入ると、さらに人集りが出来ていた。


ヤバいな。オレでこんなだから、紫津木も大変な事になってんじゃないのか?


ようやく解放してもらい、紫津木のもとへ行くと、


遠くからでもわかる苛立ちのオーラを出しまくっていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る