男の見栄かプライドか?


しょうもない嘘をついた。



この身体の下で自分をさらけ出したいなんて…馬鹿な事を考えてる。 


ホントしょうもない。引くよな。



思いが通じる事なんて、この先無いのに、そんな事どっちだっていいだろ?


告白した時だって、叶うとは思ってなかった。

紫津木は、女が好きだったし。

彼女という特定の存在は、オレの知る限り居なかったと思うが、隣を歩く女性の顔は、毎度違ってた。


それでも女だったから、自分の中で消化出来てた。



しかし…だ、



お前がそんなになるなんて…

何を悩んでる?紫津木……!



そんな事をグダグダ考えていたら、紫津木が配慮が足りなくてすみませんと、謝ってきた。 

  

オレの事で悩ませてどうする?



「ガキなのは、オレの方だった。すまん。今の事は忘れてくれ」


「えっ……?」


「いや……いいんだ。コクっておいて言うのもなんだが、負担にはなりたくない」


「葵さん……」


「て……オレは女子か?」

と、おどけてみせる。


その時、紫津木の口角が僅かに上がった。

先程の自嘲気味の笑みとは違う。



「何、笑ってんだよ」



自分のパーカーを着た紫津木は、オレにジャケットを返しながら、こうのたまわった。


「幸せだな……て、思ったのかな」

 

うっ……。

  


「葵さん……その顔、反則」



は?



「そんな顔されても、オレなんも出来ないですよ?」



なんだよ。なんだよ。オレ、どんな顔してんだよ。



「わかってるよ。でも……」



ごまかせ!何とかこの場を取り繕え!



「オレも幸せだよ。お前の家庭事情は少なからず知ってるからな。そんなお前に幸せって言ってもらえて嬉しいよ」



そうだ!論点をずらせ! 



「……泣かないでくださいね」


近いよ!そんな目でオレを見るな。

優しくするな。



「泣かねぇよ」



泣きそうだよ。



「オレも、葵さんに出会えて良かったです」



ばっ……!



「お前なぁ……!」



馬鹿野郎!お前が悪い!  



オレは、どさくさに紛れて思いっきり強く抱きしめた。



こいつのこんな一つ一つの言動に、


心揺さぶられなくなる日は、やってくるのだろうか?




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