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「はい。何でしょう?」


「愛には話訊いたんだよな?」


「はい。昨日」


「話訊いたのは、アンタら?」


「はい。僕と隣の後藤が伺いました」


「愛は、ひとりで?」


「いえ。須藤警部と一緒でした」


「そっか…須藤さんが」


少し、ホッとしたような表情。



「何か?」


「いや…いい」


「…それでは、質問させて下さいね」



それから、愛さんの供述と照合する作業が始まった。


紫津木藍は、それまでの態度とは一変して、スラスラとこちらの質問に答えてくれた。


テンポ良く進んでいき、愛さんの供述を

纏めた調書の最後のページをめくった時、その言葉が止まった。



「?…どうかされました?」


「…っんだよ、それ…」



え?


紫津木藍が見ている『それ』を目で追った。


ぁ…これは…マズい…か?


『それ』は、如月さんの例の写真。

最終ページにクリップで留めていた。



「それ、ちょっといいか?」


と、手を差し出してきた。


いや…それは、いくら何でもマズいんじゃ…?


そう思って、隣の後藤さんを見た。


すると後藤さんは、無言で写真を外すと、紫津木藍に向けて机の上を滑らせた。


は?



「…後藤さん?」


「……こちらのミスで、うっかり落としてしまい、それを紫津木さんに拾われてしまった…という事で」



さも当然のように、写真を受け取る紫津木藍。

何か僕だけ、置いてけぼり感がハンパないんですけど。


写真は、背中側と前側、両側面と計4枚ある。


まるでカードゲームで、カードの中身を確認するかのように、顔の前に写真を掲げて静かに見ている。表情が解らない。

が…、被疑者に回し蹴りしたくらいだ。暴れ出すかも。



「なあ、オレ、こんな話聞いてねぇんだけど?」

 


きた!

さっきより声のトーンが低くなってる!



「すみません」


て、何で僕謝ってんの?



「あの糞じじぃ。エロいだけじゃなくて変態だったのかよ」



…ぇ……え?



ぁ…



「そ、それは、糞…被疑者ではなくて、本人がやったんですよ」


「本人…て、愛が?自分で?」



意外な答えだったのか、目を丸くして固まっている。



「はい。触られた場所が気持ち悪かったようで…見ての通り、全身擦ったようです」


「何で…?何で擦ったら、こんな…」



えっ…?



「…風呂場にあったデッキブラシだそうです」



ぁ…



「はあ?!……バ…バカじゃねぇの…?」



やっぱり…そうだよね…?



「お前の…肌は…そんなに強く…ねぇだ…ろ?」



目に涙が溜まってる…


片手で口を覆いながら、ギリギリまで我慢してたのか、今、ポロポロと涙が零れている。


 

「…血だらけじゃねぇかよ…」



泣くんだ…。糞生意気なだけかと思ってたけど…



「……こんなになるまで…クソッ」



意外と、情が深いんだ。




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