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「そんなに気になんなら」と、僕の頬に手をかける。
「オレが普段アイツにしてる事、今ここで、アンタにもしてやろうか?」
視線が僕の唇に移る。
やられる!
僕は唇と目を固く閉じた。
「…そのぐらいで、勘弁してやってくれませんか?」
ご、後藤さん!
「こいつ、そっちの方には疎いんで。本気にしちゃいますよ」
後藤さんのこの一言で、今までの圧力が嘘のように、紫津木藍は、スーッと自分の席に戻っていった。
僕も、襟を整え仕切り直す。
ふぅ…こいつ、本当に高校生か?
確かに疎いかもしれないけど、刑事の僕がのまれてどうする?
変な汗かいたし、くそぉー!心臓煩い!
絶対、下に見られてる!
「鈴木。お前は、この人に敵わないよ」
「えっ何言って…」
「バレてないとでも思ってるのか?こうして初めてお会いする紫津木さんにも、解られてしまったじゃないか」
ぇ…
目の前のモデルを見ると、片眉をあげて「判ったか?」みたいな顔をしている。
「諦めて、通常業務に戻れ」
「えっと…僕…?」
「自分でも気付いて無いのか? 私達には、お前が愛さんに好意をもってるようにしか見えないと言ってるんだ」
は?ぇ…
「ええっ!」
「紫津木さん、すみません。お時間とらせまして…」
「いえ。こういう人って、どこにでもいますよね」
と、僕をチラッと見てバカにしたように笑ってる。
そりゃ、如月さんの事が気にならないと言ったら嘘になる。
事情を聞いて力になりたいとも思った。
紫津木藍の存在を知って、ちょっとムカついたのも事実。
そいつが、チャラくてどうしようもないヤツだったら、僕が代わって支えてあげようと……
あれ…?
そういう事?いやいや、僕、女の子大好きだし…、
「おい、悩むのは後にして、いい加減、業務に戻ってくれ」
そ、そうだよな。まさかな。取りあえず今は、集中しないと。
「そ、それでは、幾つか質問をさせて下さい」
「その前に、訊いておきたい事があるんだけど」
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