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結局、事情を説明し、不本意ながら病院まで送って貰う事になった。
オレが助手席、アイツらは、後部座席に。すみれちゃんは、やっぱ辛いのかリュウの膝枕で横になってる。
しっかし、落ち着かねぇ。
「オッサン、こんな事して大丈夫なのか?」
運転している隣のオヤジに声をかけた。
「なんだ、心配してくれるのか?」
「うっせぇ。そんなんじゃねぇけどよ…」
「落ち着かないか?」
馬鹿にしたような含み笑い。
オレが答えないでいると、
「たまには、合法で信号無視もいいもんだろ?」
「お巡りのセリフかよ」
そんな馬鹿なやり取りをしている間に病院へ到着した。
リュウは、すみれちゃんを姫抱きにして、一旦車を離れたが、また戻ってきて運転席側に回り、オッサンに一礼すると、今度こそ夜間入り口に入っていった。
リュウが居れば大丈夫だな。
「お前は、行かなくていいのか?」
いまだ助手席に座ったままのオレに向かって、オッサンが不思議そうに声をかけてきた。
「オッサン、名前は?」
「前に、身分証見せただろ?」
「覚えてねぇよ。つか、動体視力良くねぇし」
「佐藤和夫だ」
「プッ どこにでも居そうな名前だな」
「お前、ヘルメット被ってなかったな」
「悪かったよ。それから、オレは『お前』じゃない。須藤哲哉だ」
「そうか。哲哉か」
オレは、ドアに手をかけ降りようとしたが、その時オレの中に降りてきた言葉をそのまま口にしていた。
「お巡りには、どうやったらなれんの?」
*****
オレが、佐藤さんとの話を終えて夜間診療の待合室に行くと、2人の姿は無かった。
忙しそうに小走りに動き回ってる看護師さんを捕まえて訊いてみると、緊急オペになったらしく、2人とも手術室にいるらしい。
緊急オペって、何だよ。
オレは、ずっと感じていた胸騒ぎが大きくなっていくのを感じながら、手術室に向かった。
オレが到着すると、手術室のランプが点いていて、目の前の長椅子にリュウが座っていた。
「リュウ」
上体を倒して両手で顔を覆っているリュウは、オレには気づかないようだ。
「リュウ」
今度は、肩に触れてみた。
肩がビクッとなってオレを見上げたリュウの顔は、何かに怯えているような…こんなリュウ…見たことねぇ。
「どした?んな泣きそうな
ワザとおどけて訊いてみた。オレの事をよく知ってるリュウは、こんな事では怒らない。
「…帝王切開…。前から決まってたらしい…」
「そうか」
…ん?すみれちゃん、何ヶ月だった?そんなにお腹、目立って無かったよな…?
オレもリュウの隣に座って、ランプが消えるのを待った。
どれ位時間が経ったろうか、走ってくる足音が遠くから聞こえてきて、廊下の角から姿を現したのは、メガネさんだった。
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