「お前、モテんだろ?」


「はっ?」



廊下の少し後ろを歩く、抜け駆けヤローに声を掛けた。

揶揄う感じを装ってはみるものの、少々ムッとしている。


プレゼントもそうだが、愛ちゃんとのあの距離感。 計算付くか?じゃなかったら、天然たらしか…。


「…何?」


…後者だな。



リビングに入ると、ローテーブルの上に、料理が沢山並べられていて、作りすぎたって言ってたけど、確かにな。一条さんと2人じゃ食べきれないだろう。



「後、ケーキもあるからね。いっぱい食べて」

 


それを聞いただけで胸焼けしそうだが、愛ちゃんが嬉しそうにしてるから…まあ、良いか。なんて、思えてしまう。



「一条さん、冷蔵庫借りるね」


愛ちゃんは、そう言いながら、冷蔵庫を開けてチョコレートを入れている。


「お風呂上がりに、ホットミルクと食べるんだ」


本当に好きなんだな。


「なあ。愛ちゃんの好み、いつリサーチしたんだよ」


シノは、チラッとオレを見て、また愛ちゃんに視線を戻すと、ポツリと呟いた。


「…好きなヤツの事、思い浮かべただけだ」


「あっそう」


真顔で言われると、こっちが照れる。



「お前らは、酒呑むなよ」


「「…宮内!?」」


あまりの衝撃に、シノとハモっちまった。


何故か、宮内がキッチンで缶ビールを煽ってる。



「何で宮内がいるんだよ」



シノは、宮内に聞こえるような大きな舌打ちをした。



「リュウとテツは、昔の仲間だ。それだけだが?」


「……ぇっ…?」



え?テツ…て?


キッチンの中を覗いてみると、ダイニングテーブルに、一条さんと須藤さんが座っていて…なんかもう、出来上がってる感じだった。



「もしかして、愛ちゃんもお酒呑んでる?」


「え?うん。缶カクテル呑んだよ。ヘヘッ」



カクテルって、飲み口いいけど、結構強めだろ?

愛ちゃんって、酔うと甘えモードになるのか?

 


「シノ。愛ちゃんに訊きたい事があるなら、しっかりしてるうちに訊いた方がいいぞ」



返事が無いので、シノを見ると、居酒屋の雰囲気を醸し出している大人チームの方を見て固まっていた。



「シノ、どうした?」


「ぇ…いや…なんでもない」


なんでもないって顔じゃねぇけど?


「何か気になる事でもあるのか?」


驚いたような顔でオレを見るシノ。


意外か? オレ、結構人間観察得意なのよ。



「……いや…」


「…ん?」


食い下がってシノの顔を覗き込むと、観念したのか、ボソッと小さな声で呟いた。


「…蒼龍のリーダー、一条なんだ」


「へぇ。……で?」


「元リーダーの兄貴の事、リュウて呼んでた」


「そう。………は? いやいや違うだろ?」


改めて大人チームを見た。


一条さんは、ともかく、確かに昔ヤンチャしてました。みたいな雰囲気を醸し出していた。



「…マジか。確認するのか?」


「いや……畏れ多い」


不良なのに、上下関係は気にするんだな。 


「何?」


「別に」


そういうとこ、嫌いじゃないぜ。



「ねぇ。北本君?」


愛ちゃんが、オレの袖を引っ張って、顔を覗き込んできた。


「オレが解らない難しい話?」


ぅっ……解ってないと思うけど、困ったように眉をハの字にして、上目遣いで見つめられたら……紫津木、早く帰ってこい!


「ごめんね。食べようか」


「うん!」



ダメだ。めっちゃ可愛い。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る