ボクこそが大人(死神の逆位置)
「ねえ主ー!」
「死神くん、どうしたの?」
「一つ聞きたいんだけど、主の世界でいう大人ってどんな人を指すのー?」
彼は何の前触れもなく、自分が気になったことを質問することがある。その内容の多くは、普段意識して考えないような事で、正直言って回答に困ることもある。
「そうだな……年齢的なところで言えば、二十歳以上の人のことを指すかな?」
「それって、身体のことでしょー? ボクが聞いているのは精神的な部分も含めてなんだけどー!」
一般的に、二十歳を超えた人のことを成人と呼び、立派な大人であると言われているが、彼の言う大人とはどうやら異なるようだ。とはいえ、精神的な部分を含めて考えたこともなければ、二十歳を超えれば大人であると言われ続けてきたということもあり、思いつかないのが現状である。
「人間ってさ、体の成長だけで判断してるんだね。勿論定めておくことはいいことだとは思うけどさ、それだけで大人っていうのはちょっと変なんじゃないかなー?」
「まあ確かに、精神的な部分については成長していない人も多いし、大人っていうには未熟な人もいるからね……」
彼の住む世界においては、子供や大人といった概念は存在しないようで、みんなが同じように働き、同じように過ごすというのが日常だという。その為誰が上で誰が下ということもなく、同じ責任をもって過ごしている為、誰かに責任を擦り付けるような卑怯なこともしないらしい。
「体が成長したからって、心まで成長するとは限らないし、大人なんだからとか子供なんだからとか、決めつけたりしないでほしいよねー! その基準で言えば、ボクはまだ子供ってことになるんでしょー? 主の言う大人と、ボクとだったらどっちが大人だと思うー?」
「それは……考え方とか見ると、死神くんかな?」
「でしょー? ボクこそが大人なんだよ! もっと見習ってほしいよねー」
小さな大人の彼は、そう言ってふふんと鼻を鳴らし、誇らしげに笑っていた。こんな小さな子に言い負かされているようでは、まだまだ大人への道のりは長いなと、痛感するのであった。
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