あだ名の命名(悪魔の逆位置)

「あだ名、でございますか?」

「そう、主としてであれば弟さんって呼んでもいいかもしれないけど、友達として呼ぶときに弟さんっていうのはおかしいかなって思って」


 ある日を境に、彼の主及び友達となった私は、彼のあだ名を考えていた。基本的に主として接するときに関しては、呼ぶこともほとんどないが、友達ともなれば流石に何かあだ名はいるだろう。彼らカードにはカード上の名前しかない為、しー君のように私が何かあだ名を付けて好きに呼んでいる。勿論本人の了承をもらってからの話ではあるが。


「昔デビちゃんに呼ばれていたあだ名とか、何かない?」

「滅相もない! 兄さんは幼い頃からあこがれの存在でしたしそのころから私は兄さんを」

「聞いた私がばかだったわ、あるはずないもんね」


 すっかり忘れかけていたが、この狂弟は物心ついたころより兄であるデビちゃんに対する尊敬心が芽生えており、自分のような存在が一緒にいるのはふさわしくないと、頻りに兄と距離を取っていたのである。今でこそベタベタにくっつくようにはなったものの、あだ名のようなものはないままのようだ。


「私はほら、貴方のお兄さんの事デビちゃんって呼んでるでしょ? あだ名で呼ぶと、親近感も湧くし特に友達の間なんかではよくあることでもあるからいいと思うんだけど……」

「そういえば、そのような呼び方をされておりましたね。当初は失礼な方だと思いちょうきょ……注意して差し上げようかと思っておりましたが、そのようなもくろ……試みがあったとは思いませんでした」

「調教もいらないし、目論んでもいないからご安心を! だから貴方にも何かいいあだ名があったら呼びたいなって思うんだけど、リクエストとかない?」


 そう言うと、彼はしばらく考え込むしぐさをして黙り、思いついたような表情をして言った。


「兄さんがますます引き立つようなあだ名が良いですね、私を呼ぶたびに兄さんの素晴らしさが伝わるような」

「一旦兄さんから離れて考えようね、あだ名でなくとももうみんなわかってるから! 悪魔にちなんだあだ名とかならいいかもしれないわね」

「さすがは主様、兄さんの主であられるだけあって素晴らしい理解力です……見直しましたよ」


 わざとらしくハンカチで目を覆うしぐさをする彼を無視しつつ、私は頭の中でいろんな単語を浮かべては消しを繰り返し、ついにこれだというものを思いついた。


「ディアブロなんてどう? 確かスペイン語で悪魔って意味があったような気がするし、ゲームとかでもあるからほかの人にもなじみがあっていいんじゃないかな?」

「ディアブロ……それは素晴らしいですね主様! 親愛なる兄さんという意味を含ませて下さるとは、持つべきものは友達ですね!」


 そういう意味じゃないんだけどと、心の中で大いに突っ込みを入れつつ、気に入ってくれたのであればいいかと諦める私であった。

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