一難去ってまた一難(運命の輪の逆位置)
同じ過ちを繰り返してしまったり、嫌な事や悪いことばかり立て続けに起こることがある。そんな時人は何をやってもダメだと思い込んでしまい、ズルズルと抜け出せないままになってしまう。
「どうアドバイスすればいいんだろう?」
占いをやっていると、様々な人の悩みを聞く。その中でも多いのが、最近いい事が起こらないといったもの。悪いことばかり起こって、生きるのが嫌になったり、諦めてしまったりする人が多い。
そんな人達に対して、なにかいいアドバイスが出来ないものかと悩んでいると、ふと一人の人物の顔が思い浮かんだ。
「こんにちは、運命の輪の逆位置さん。今少しだけいいかな?」
私が訪れたのは、『運命の輪』の逆位置さんの部屋。突然にも関わらず歓迎してくれた彼女は、さらさらとスケッチブックに何かを書き込み、私に見せてくれた。
『こんにちは主様、構いませんよ』
「ありがとう、聞きたいことがあって……」
私は彼女に話し、聞き終えた彼女は普段持ち歩いている羅針盤のようなものを起動させると、私に見せてくれた。
「これ、いつも逆位置さんが見ているやつだよね?」
『はい、これは人々を取り巻く運命を事細かに見ることも出来るのです。相談を受けた方の運命を少し辿ってみましょう。軸を合わせればその方専用に変形するんです』
彼女はそう言って、羅針盤の中心部にある突起に触れ、指でくるくると回転させた。すると、今まで表示されていた画面に、ミニチュアサイズの人が現れ、落胆した様子で歩き始めた。その人が歩みを進める度に、見えている風景が切り替わる。
「凄い、まるでRPGみたいだね! あれ、画面の上に吹き出しみたいなのがいっぱい出てきてるね。これは何?」
『これはこの方が歩みを進めるにあたり、本来必要であったものです。これがないまま進むと、壁に苛まれて進めなくなってしまいます』
彼女の言うとおり、画面上の人は自分よりも高く大きな壁に苛まれ、何とかよじ登ろうとしたが上手くいかず、結局諦めてその場に座り込んでしまった。
『この方の場合、何時も同じものを用意されていらっしゃらないようです。それにより、違う道を進んでも、またここに戻ってきてしまう……どの道を行くにも、この壁は乗り越えなくてはなりませんが、壁を超えるための道具を用意しなければ同じ事の繰り返しなんです』
彼女曰く、どのルートを選んだとしても、この壁は必ず乗り越えなくてはならない道であるのだという。その関係で別のルートに進んだとしても同じ壁にぶち当たり、越えられずにまた繰り返すという状況が続いてしまうらしい。状況を変えたり、先に進みたいと思うのなら、目の前の壁を超えるための道具を手に入れなくてはならない。
『多くの方は、その道具の正体は理解されています。どうしても御自身の中では、避けられたいと思われているようですが……』
「じゃあ……自覚はしているけれど、どうしても用意したくないって思っているから、越えられないってこと?」
『はい、避ける以外の選択肢を導こうと行動をし、またここにたどり着いてしまうのです。避けるのではなく、乗り越えるように動けば、壁は低くなります』
一難を避けるためにと進んでも、また同じ一難を繰り返してしまう原因。それは無意識の中に、その一難に向き合えていないからなのかもしれない。その連鎖を断ち切るために必要となるものは、必ず自分にとって良いものとは限らない。中には出来れば避けたいとさえ思うこともあるだろう。
それでも、その先に待つ道へ進んで欲しいと願う彼女は、今日も運命を見つめ、私達に合図を送ってくれているのであった。
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