(三)-4

 木野はすぐに車の反対側に回りこんで豊永に近づいた。ヤツは胸を押さえてその場でうずくまっていた。

 ヤツは「なんで、あんたみたいな人間が……」と顔を上げて木野をにらみつけてきた。

「いいか、世の中にいる本物の悪党ってのはなぁ、そもそも善人面をしているもんなんだよ。お前みたいな、いかにも悪人づらした人間は、小悪党や犯罪者にはなれても悪党にはなれねぇのさ」

 そう言い終わると、木野はもう一度、二回引き金を引いた。一発は頭に命中し、もう一発は首の付け根鎖骨のあたりからヤツの体内に入った。

 豊永はそのまま動かなくなった。木野は足でその体を押して仰向けにさせた。豊永の目は見開いたままだが動いてはおらず、頭の揺れと同じベクトルに視線を揺らしていた。

 木野はスーツから携帯電話を取りだして電話をかけた。


(続く)

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