(三)-3

 とはいえ、ヤツには証拠を掴まれたわけではない。ただの当てずっぽうで来ている。だから知らぬ存ぜぬを通してもよかった。しかし、この状況だと、ヤツが一線を越えてくるのは間違いない。だからこそ、二人きりになりたいと言ってきたわけだ。力ではヤツにかなわない。

「頭がいい人間は嫌いじゃない。だが、……察しのいい人間は、嫌いだ」

 木野はそう言いながら拳銃のセイフティを解除しながら銃口を豊永に向けた。

「本性を現したか」

 木野は豊永が言い終わる前にその胸をめがけて二発撃った。

 初弾は豊永の胸に命中したが、もう一発はヤツが体を反らしたため外れた。その動きは速かった。やはり、予想通りただ者ではなかった。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る