第34話 ターヒル

アタシの父さんは誰にでも分かるくらいハッキリ怒ってた。


「ティトラウステス、アザム団長が傷だらけになりながらも本気で戦おうとしてくださってるのに。

 キサマと言うヤツは!」


アレはアクマモードの父親。

赤くなってテトラを怒鳴りつけてる。

んん-、怒ってるのはアザ熊を敵に回して戦ったコトじゃ無いらしい。

そこからヤル気失って投降してしまったコトなのね。


「と、父さん……」


「落ち着いてください、ターヒル先生」

「ターヒル師匠、どうしたんです?」


普段温和な人で通ってる父が激高してるんで、道場の人間は驚いている。


「ターヒル先生のあんな顔、ハジメテ見た」

「ターヒルさん、怒ると怖いのねぇ」


エステルやヘレーナさんも引き気味。


アタシは怒るとアクマになる父だってコトをよく知ってるけど。

他の人の前では怒らないからなー。

しかも、アレは相当に切れてるぞー。


立てないでいたテトラの首根っこ捕まえて、強引に持ち上げる。


「……父さん、僕だって頑張ったんだ。

 最初はいい勝負してただろ。

 相手がアザムさん程タフじゃなかったら、勝ってた……」

「キサマ程度がアザム様に勝てるなどっ!

 思いあがるんじゃないっ!!!。

 今日はイチから鍛え直してやる。

 とっとと道場に行くぞ」


そのままテトラを抱え上げて父は去って行った。


アクマに捕まったテトラは涙目。

妹よ、助けて!

殺されるから、マジで殺されるから。

アタシを見る目にはそう書かれていた。


けどねー。

ムリ!

ムリなもんはムリなの。


「可哀そーだけどね。

 アタシだって助けらんない。

 殺されてきなさい」


「殺されて、って台詞がブッソウだよ、ステュティラちゃん」

「みゃー、んみゃんみゃ」


エステルと男爵が驚いたように言う。

アタシは返す。


「エステル、オーバーに言ってるんじゃないの。

 アタシもテトラもあの人怒らせるとどーなるか、良く知ってんのよ」


「ええええ!

 確かにさっきのターヒル先生、怖かったー!

 温和な人だと思ってたからビックリだよ」

「んみゃー、みゃみゃみゃみゃ」

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