第21話 休憩

『ステュティラちゃん、エライ。

 ベスト4に残るなんて大番狂わせサイコーネ。

 ……うひょひょ、大方の狙いが外れる方が、胴元のワタシ大儲けナノネ……」


アタシに抱き着いてきたのはファオラン。

なんか小声で言ってたみたいだけど、良く聞こえない。


「はい、差し入れ。

 包子パオズ茉莉花茶ジャスミンティー、食べて食べて。

 それで午後も勝ち抜いてなのネ」


ファオランさんの出店は昼時ですっごい混んでいたんだけど。

一段落したんで、他の人に任せて抜け出てきたらしい。

アタシの口に包子パオズを放りこもうとする。


「やめーい。

 今はこれ以上食べる気無いから、後でね」


「おおっ! びっくり!

 ステュティラちゃんが食べ物遠慮するの、ハジメテ見たわ」


横で驚いてるのはエステルのお母さん、ヘレーナさん。

いつの間にか現れて、エステルとお弁当食べてた。

一緒に黒猫の男爵まで現れているわね。


「動く前に食べ過ぎると、体が重くなんの。

 試合終わったら食べるから、取っておいてね」


包子パオズをアタシはエステルに渡す。

一番信頼出来る親友だからね。


フンフンと鼻を動かせながら男爵がエステルに近づく。

コラッ!

アタシの食べ物に手を出すんじゃないわよ。

 


「午後からの試合をはっじめまーす。

 最初はターヒル道場の一人娘。

 まだ若いのに剣を使わせたら一人前。

 おなじみ、ステュティラちゃんでーす」


エラちーの紹介に合わせて、アタシは手を振って試合場に入っていく。


「ステュティラちゃん、がんばれー」


「ステュティラちゃーん、適度にがんばれー」

「ステュティラちゃん、急所狙いだけはすんなよー」

「ステュティラちゃん、負けたからって八つ当たりはカンベンしてくれ」


最初の素直な応援はエステルのモノ。

あんがと、やったるわ。


次のダレた掛け声は道場の人たちね。

いつも一緒に練習してる仲間だってのに。

もうちょっと素直に応援しなさいよ。

覚えといて、後でグーパンかしら。


「ステュティラ、ナシールさんを怒らせるのだけはよしとけよ。

 なんなら、体調悪いって、棄権しちゃうのはどーだ?」


これはアレシュの。

そんなズル休みみたいなマネするのはアンタだけでしょ。

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