第9話 第三試合

「はーい。勝者はナシールさん」


勝負は一瞬で着いた。

ナッシーの相手はアタシの知らない奴。

護衛団でも、ウチの道場の人間でも無い。

体格だけは結構良くて、ケンカ慣れしたフンイキ。

そいつが突っ込んでいくのをナッシーは華麗によけて、足払い。

相手はロープを越えて場外へとひっくり返った。


「いかん。

 とっとと負けるつもりだったのに。

 つい足が出ちまった」


勝ったってのに悔しそうな顔を浮かべてるナッシー。

余裕ね。


でもやっぱりこの人はデキるんだと思う。

チンピラが襲って来たってのに、慌てず相手のバランスを崩した。


「わー、ナシール副団長。

 ホントに強いんだ。

 ステュティラちゃん、次の次で戦うコトになるんだよ。

 大丈夫?」


ナッシーとアタシが?!


「最初に説明されてたでしょ。

 第一試合と第二試合の勝者が戦う。

 第三試合と第四試合の勝者が次。

 で、その勝ち抜いた人が準々決勝」


「アタシがそんなメンドくさい説明聞いてるワケ無いでしょー」

「なんでステュティラちゃんが自慢げに言うのか、ゼンゼン分かんないよっ!」


「エステル……細かいコトは気にしないってのも大事よ」

「細かくないっ。

 ゼンゼン細かく無いよっ!」



第四試合の出場者は知り合いだった。


「アレシュ先輩、頑張って下さい」

「エステル、ありがとう。

 ……やっほーい、嬉しーー……」


「アレシュ、なんだって参加してるのよ?」

「ステュティラ、副団長に参加しろって言われたら、断れないだろ。

 いや、そうじゃなくて。

 自分の限界を試してみようかと思ってね、俺だって護衛団の一員だからさ」


アレシュはエステルの方向いて変にカッコつけてる。

コイツはアホか。

エステルはアンタがエステルに気があるなんて気がついて無いってーの。


エステルは昔からカワイイ女の子だった。

更にここ最近一気に女らしくなって、美少女としてランクアップ。

そんなエステルがアタシん家に遊びに来るのを見ていたアレシュ。


俺、エステルちゃんのコトが気になってたまらないんだ。

ステュティラ、どう思う?

これって恋かな。


知るか!

アタシのトモダチに変なマネするんじゃ無いわよ。


ウッザイ台詞を言うアレシュをそう言ってぶっ飛ばしてきたのだが。

アレシュは懲りた様子が無い。


「まーテキトーに頑張んなさいよ」

「ステュティラに言われなくても、頑張るっての」


アンタは、そのエステルへの態度との差を何とかしなさい。

試合に勝っても、負けてもグーパン決定ね。

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