第8話 ナッシー

「ナシールさぁん!」

「『鬼のナシール』ってウワサの人でしょ。

 ホントにハンサムなの?」


「見た事無いの?

 ホンマモンの美形よ、美形」

「そうなの、イケメンで有能! 気になる!」


なんて観客たちが盛り上がる。


「へー、ナッシー出るんだ」

「……ステュティラちゃん、まさかとは思うけど……

 そのナッシーってのは……?」


「副団長の事に決まってんじゃない、エステル。

 ナシール、ナッシーよ。ナッシー」

「その名前……ナシールさんに聞こえるトコロでは言わない方が良いよ」


アタシも試合見ようかな。

ナッシーが勝ち上がれば戦う相手だし。

それに確かにあの人はイケメンなんだ。

整った顔に真っ直ぐな黒い髪。

目が吊り上がって少し怒った風に見える。

印象的な美男子。

けっこうアタシのタイプ。


「ステュティラちゃん、やっぱりメンクイだよね」

「エステル、メンクイってなに?」


「メンクイ、顔の良い男の人を好きになる事。

 面食い」

「へー、みんなそうじゃないの」


見ると観客の女子は全員ナッシーに注目してるんだ。


「あれ、ナシールさん。

 絶対出ないって言ってたのに、どうしたの?」

「エラティー、お前とトーヤーが出ないからだろ。

 契約不履行とうるさく言われてな。

 仕方ない、最低限の義理は果たすさ」


「あはははは、お疲れさま」

「笑ってんじゃねぇよ!」


ナッシーの怒った声で観客の女性が少し引くのが分かる。


アタシは美少女だけど、小さい子供の頃から武術道場で荒くれたヤロウどもと過ごしてたんだ。

そんなアタシから見れば怒ったというほどの声でもない。

ナッシーはもともと吊り目だから、怒っても怒ってなくても大して変わらない。

キツイ表情のイケメン。


いつも笑っていて、ナニ考えてんだか良く分からないエラちーより。

怒ってみせるナッシーの方が良いと思うんだよね。

たまーにだけ目のはしで笑うのもステキ。


エステルはエラちーの方が気に入ってるみたいなんだよな。

まぁ、エラちーはエラちーで意外と剣が使えるとゆー話は聞いている。

ウチの道場に来てる連中も言っていた。

『天のエラティー』

今回、腕の程が見れるかとも思ったんだけどな。

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