第7話 蹴ったれ

このファッティマとか言う女、ムカつくわー!

丁度、床に寝そべってるから蹴ったれ!


そう思ったのにエラちーがジャマする。


「一回戦はステュティラちゃんの勝ちー!!」


勝っても嬉しく無いわ。


「アンタ、つまんないじゃないの。

 一発蹴らせなさいよ」


ファッティマは怯えた顔をした。



「いやー、この娘コワイ~。

 わたしが美人だから、やっかんでるのね。

 蹴られる~。

 助けて、エステルちゃん」


何故かアタシの親友、エステルに抱き着く。


「えーと、ファッティマさん。

 いきなり知らない人を蹴る程ステュティラちゃんもそこまで非常識じゃ……無い……かな。

 どうだったかな。

 多分試合で興奮してるだけですよ。

 ステュティラちゃん、落ち着いて。

 どうどう」


アタシは動物か!


「ファッティマ先輩、なんだってこんな試合に?」

「だって~、

 イルファン隊長が団長や副団長から誰か出場させろって言われたらしいの。

 それでわたしイルファン隊長に言われたの。

 お前、しばらく図書館に籠って護衛団の仕事何もしなかったろ。

 これに出なかったら今月の給料払わない。

 って、ひどいと思わない~」


「それは……仕事サボってたファッティマさんが悪いのでは……

 いえ、イルファンさん、ひどいですね」


エステルにどっちの味方なのよ、詰め寄ってやろうか、とも思ったけど。

なんだか観客が拍手してる。


「おおーーーっ!!!」

「さすが、ステュティラちゃん」


「ターヒル先生の娘だけあるな」

「俺、あの娘にかけようかな」


「ふむ、剣だけが特技と聞いていたが、素手の戦も出来るのか」

「元気っ子、カワイイな」


おっ、なんだなんだ。

アタシ意外と人気有るじゃん。


アタシは観客に向けて腕を突きあげてやる。


「いっえーーー、いっちばーん!」


道場のヤロウどもが拍手して、それに釣られて他の人まで拍手。


うん。

ちょっと気分良いわね。

やる気無かったんだけど、もう少し頑張ってみようかしら。


次の試合はウチの道場の人間と護衛団の隊員だった。

むくつけきヤロウ同士の試合。

こんなの見て誰が喜ぶってのよ。

と、思ったけど割と観客は湧いてる。

特に女性客が興奮してるな。

やれー、ぶっ殺せ!

物騒なカンジに盛り上がってるわね。


「次にステュティラちゃんが戦う相手でしょ。

 見とかないでいいの?」


エステルに言われて、アタシは試合を見ようとしたけど。

既に勝負はついてた。

道場の人間の勝利。

近付いて来た相手にカウンター気味に膝蹴りが決まった。

アレは立てないわ。



「第三試合行くよー。

 次の対戦選手はナシールさん」


エラちーがそう言って、一気に会場はヒートアップ。


「キター、ナシール副団長」

「ウワサのハンサム」


「あたし達、ナシールさんを見に来たのよ!」

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