第6話 勝負

「第一回戦はファッティマさんとステュティラちゃんの勝負でーす」


エラちーがそう宣言して。

試合会場でアタシとその女は向き合っていた。


「ファッティマさん?!」


エステルが驚き声を出す。


「誰、あれ?」

「ファッティマさん。

 先輩なんだけど……

 3番隊の所属なんだ。

 初めて知った」


エステルは知ってるみたいだけど、アタシは知らない。

3番隊ってなんだったかな。

あれか、黒ずくめだった変なオッサン。

イルファンと名乗ったヤツ、アイツが3番隊隊長と言ってた気がする。


だからかしら。

この女も黒いドレスを着てる。

黒髪をロングにして顔まで半分隠しちゃって暗い雰囲気。

でも顔の前面にかかった前髪からチラリと見える顔は、意外と美人ね。


どう見ても女戦士には見えない。

そのロングドレスで試合するつもりなの。


アタシはと言えば、軽めのシャツとパンツ。

頭に白いターバンをキュッと巻いて外れないよう縛ってある。

拳には革のグローブ。

柔らかくて軽い革製の手袋でゆったり大き目。

相手に与えるダメージも軽減されちゃうんだけど。

ウチの道場の特注品、自分の拳を守るためにはグッドな品なのだ。


女の方は頭にいい加減にターバンを巻きつけてる。

拳も一緒だ。

布を巻き付けてるんだけど、多分初めて。

キチンと拳にダメージ受けないように巻いていない。

テキトーにフルグル巻いてるだけね。


「アンタ、ファッティマとかゆーの」

「……なに?」


「そんな風にテキトーに拳に布巻き付けてたらケガするよ」

「そうなの?」


女はキョトンとアタシに訊く。


「アッタリマエじゃない。

 人の骨って固いの。

 拳でアタシの骨殴ったら、こっちもダメージ受けるけど。

 アンタの指の骨だって折れるわよ」


「指の骨?!

 止めて~~

 痛い言いたいイタイ」


まだ何もしてないのにファッティマはしゃがみ込んでしまった。


「ひどい~。

 考えただけで痛くなる~。

 わたしが痛みに弱いと知っていての戦法なのね。

 イジワルだわ~

 やっぱり美人はイジメられる運命なのね」


アンタの事なんて知るか!


「いやー、もう戦うなんて出来ない~」


ファッティマはそのまま床に横になってる。

なんかこの女ムカツクわー。

蹴っちゃおうかしら。


そう思ったのに、エラちーが間に入る。


「ファッティマさん、戦意喪失のため敗北!

 一回戦はステュティラちゃんの勝ちー!!」

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