第5話 審判

「うちの道場の宣伝をして下さってるんだ。

 ステュティラも協力しなさい」


そんな父親のヒトコトでアタシは参加する事になった。

格闘大会。

一応ターヒル武術道場の大会で、道場内の順位を決める定期イベントなんだけど。

道場には通ってない護衛団の隊長が参加して、もうなんだか良く分からない。

ファオランの狙い通り話題の大会になっちゃった。



「それでは一回戦を始めるよー」


大きく声をあげたのはエラちー。

一番隊の隊長だ。


「今回は素手による格闘戦の大会です。

 出場者は16名。

 一回戦を戦って勝った8名が二回戦。

 それで勝ち抜いた4名が準決勝。

 最後の2名が決勝戦で1位を競う」


エステルが首を捻ってるわ。


「あれっ? エラティーさん。

 出場するんじゃなかったんですか。

 何故審判に?」


「んー、勝ち残っちゃったらアザムさんと勝負になるでしょ。

 団長とケンカしたくないからさ。

 出場しない、って言ったら。

 ファオランさんが

 『天のエラティを見に来る人がいっぱいいるノネ。

  何でもいいから出てくれナイと困るノ』って。

  仕方ないから審判にする事になっちゃった」


「はーい。

 それじゃルールは素手ならパンチもキックもあり。

 ただし危険なんで拳と頭には柔らかい布を巻いてます。

 少しほどける位はいいけど、布が全部外れちゃったら負けね。

 後は自分で負けを宣言するか、気絶したり戦意喪失も負け。

 場外に出ちゃった場合も負け」


広い庭にロープで四角く仕切られた場所が出来ている。

それが試合会場ってコト。


そこから又仕切られて椅子が並んでいて、見物客が並んでる。

護衛団の人間もいるけど、普通の街の人もいる。

結構な人数が集まってる、みんな暇なのね。


これで剣の大会だったらアタシもやる気出すんだけど。

格闘じゃぁね。

テトラには絶対勝てない。

あの男は実は剣や刃物がニガテ。

替わりに格闘が大得意なのだ。


「では第一回戦始めまーす。

 名前を呼ばれた参加者は出て来てくださーい。

 一人目、護衛団の幽霊美人。

 どこにいるとも知れず気が付くと床に寝てるフシギ美女、三番隊のファッティマさん。

 対しますはターヒル武術道場の主ターヒルさんの愛娘。

 参加者の中では最年少、ステュティラちゃんでーす」


なんですって?!

しょっぱなからアタシの出番なの。

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