第4話 交渉

アタシはファオランを甘く見てたかもしれない。

タダのお金にウルサイ商売人の娘くらいに思ってた。

だけど、彼女の行動力はハンパじゃ無かった。


いつの間にかウチの道場の格闘大会は護衛団の敷地で開催されるコトに。

高台に在る護衛団の建物。

けっこう広いスペースの庭があるんだ。


ファオランがアザム団長に交渉したらしい。


「ターヒルの道場の格闘大会?

 いいじゃないか。

 彼には世話になってる。

 自分も出ようかな。

 素手の格闘を習った訳では無いがようはケンカだろう。

 団員たちにも声を掛けてみよう」


「ああ、だけどナシールにも話をしておいてくれ。

 色々都合もあるだろうし、その辺はナシールに任せっきりなんだ」



ナシール副団長にはキッチリ準備して話したらしい。


「ダメだ。

 一般人を敷地に入れるだと!

 何故そんなヤジ馬の面倒をウチが見なきゃならんのだ」


「フム、低い金額の入場料を取るのか。

 ならタダのヤジ馬は減りそうだな。

 それで屋台や売り子を出す。

 純利益の1割はこちらに回すのか。

 3割よこせ。

 その替わり団員たちには参加勧めといてやる」


「俺?

 俺がそんな茶番に出るハズ無かろう。

 換わりにトーヤーとエラティを参加させろ?

 言っといてやる」



エステルとアタシが聞いた話だとそんなカンジ。


「ナシールさんなら確かに『鬼のナシール』って有名だもの。

 話題性あるのに、参加しなくて残念だったね」


エステルはファオランにそんなコト言ってる。


「副団長がぜ~ったい参加しないのは読めテタネ。

 でも先に言っておいて、換わりにトーヤー隊長とエラティ隊長を参加させるヨ。

 交渉ごとのキホンなのネ」

「おおーっ!

 ファオランさん交渉上手」

「ほへー。

 メンドくさいコト考えんのね」


最初の誉め言葉がエステルで後のがアタシの正直な感想だ。


「『天のエラティ』さんに護衛団のキレイどころ『美人隊長トーヤー』さんが出場するとなれば、話題性バッチリ。

 小銭くらい払っても見に来る人は必ずいるネ。

 ステュティラちゃんも参加してホシイノ。

 アナタも人気あるわヨ」

「そんなテキトーな褒め言葉に引っかかるモンですか。

 さっきのセリフを聞いて引っかかる人なんて誰がいるってのよ」

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