第2話 武術大会

アタシの兄貴はファオランをイキナリ気に入って、好き好き攻撃をかまし出した。

ファオランはあからさまにじゃ無いけど、イヤがっていて。

丁度護衛団に女子寮が出来ると言うので、そちらに入っちゃった。

要するにイヤだったのね。


それ以来しょっちゅうテトラはアタシに言ってくる。

ファオランさんは遊びに来ないのか。

この家に食事しに来てくれないだろうか。

引っ越しの際の忘れ物は無いのか。

うざいったら無いわ。


まーでももしかしたら成長したのかも。

以前だったら護衛団の女子寮まで押しかけていたかも。

前回は13歳程度だったから彼女の家まで毎日押しかけても許された。

来年には成人するテトラが現在、毎日ファオランの部屋や職場に押しかけたら訴えられてもおかしくない。

その程度の常識を理解できるようになったのね。


兄の成長はめでたいけれど、だからと言って橋渡しをアタシに求められても困る。

アタシがファオランに遠慮しながら話したり。

ファオランもアタシに遠慮しつつ応えたり。

メンドくさいじゃない。


「ステラ、今回の用事と言うのは。

 来週、武術大会をこの道場でやる。

 それにファオランさんも是非参加して欲しい。

 と伝えてくれないか」



「へー、武術大会」


これはエステルのセリフだ。

アタシとエステルは今、護衛団の建物に向かってる。

大会なんて呼んでるけど、参加者は毎年10人程度。

そんな大げさなモノじゃない。

要は道場内の順位決め。


「そうよ。

 今年は素手による格闘大会なんだってさ」

「去年は剣だったよね。

 毎年、順位を決める大会やってるのは知ってるけど。

 種目も毎回変えてるんだね」


 一応、ウチの武術道場ではなんでも教えてる。

入門生に一番多いのは剣。

父のターヒルも最も得意とする武器だから、ちょうど良い。

アタシも勿論剣が一番得意。


それ以外にも槍でも弓でも、父は人に教えられるレベル。

兄のテトラが一番得意なのは素手による格闘術。

以前はそんな部門無かったんだけど、テトラが格闘に才能を発揮したモンで、道場に新たな部門が出来ちゃった。

意外とそれを目当てで入門してくる人もいて。

刃物まで持つのは物騒だけど、自分の身を守る術は欲しい。

そんな護身術と運動を兼ねた女性なのね。

素手の格闘を得意とする人間は多くない。

だからテトラと父親が優勝争いの一騎打ちになると思う。


「それは、確かにファオランさんなら活躍しそうじゃない」

「ん-、そうかもだけど。

 テトラはファオランに良いトコ見せたいだけだわよ」

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