第10話 濡れネズミ

キングの部下の猫たち、逃げ足のグレイさん、リリーちゃん。

みんにゃキングと言う猫のシッポに見惚れてるの。


「イケニャいわ。

 虎タル以外のオス猫ニャんかに見惚れちゃイケニャいわ。

 ああっ、でも!

 あのシッポの動き!

 たまんニャーーい!!!」


瞳をハートマークにしてリリーちゃんが飛びつく。

そんにゃ彼女をキングが抱きとめるの。


「フフフフ、

 よく来たね、クイーン。

 キミはもう私のトリコだ、そうだろう」

「そんニャだめよ……

 ああっ、でも、モッフモフ。

 ……ス・テ・キ」



「オス猫の俺でも惹かれてたみゃらニャいんみゃ。

 リリーのようニャ若いおんニャじゃ無理もニャい」 


グレイさんまでそんにゃコト言ってる。

その目もハートマーク。

キングの尻尾を夢中で追ってるの。

周りの猫たちも一緒ね。

全員キング猫に魅せられて、そのあげくみんな部下として言う事を聞いてるの。


確かにあのシッポの動きには少し惹かれてしまうわ。

でも。

負けるもんですか。

どうにかしにゃきゃ。


わたしは猫ダッシュ。

公園には子供のためか小型の水汲み場があった。

転がってた桶をひっつかんで、そこに水をたっぷり汲み入れる。



「キング……ステキだ」

「キング……最高!」

「キング……惚れるぜ」

「キング様……ああキング様」


元からキングの部下だった猫たちにゃんかもうスッカリキングにベタ惚れ。

リリーちゃんやグレイさんまでそのにゃかに入ってしまいそう。



封印解除ステータスオープン

【器用度上昇】

【投擲能力強化】

【命中率向上】


わたしは桶を掴んで、そのにゃかの水をエイっとにゃげつける。

次々と桶に水を汲んで、にゃげるわたし。

目標はモチロン、キングよ。


「わっ、ナニをする?!」


驚くキングだけど、わたしの水からは逃れられない。

あっという間に彼は濡れネズミ。

ネコが濡れネズミなの。


フワフワモッサリ膨らんでた毛がペッタリ張り付いて。

スッカリ細い貧相な外見ににゃっちゃってる。


周りの猫たち、キングの部下だったヤツらは怪訝顔。


「あれ、俺たち……ニャにかに夢中にニャってた気がするんだが……ニャんだっけ」

「ん-ー、ニャんだったかニャ」


グレイさんとリリーちゃんも。


「アレ、ニャんで俺こんニャ奴らに従ってたんだ……

 クッ、俺とした事が。

 逃げ足のグレイ、一生の不覚だぜ」

「……ハッ、思い出した!

 この猫~、虎タルの仇だわ。

 ふっざけんニャ!!!」

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